紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

庵の新着ブログ記事

  • “Soul bar-IORI” 命日

     1980年の今日(アメリカ時間の日付は8日)、当時私はまだ高校生だ。バンドの練習を終え帰宅すると母親が興奮気味に話している。 「あんた、ジョンが死んじゃったよ」  母親から結び付くジョンは隣の犬しか私は知らない。まさか外国の方に知り合いがいるようなハイカラなおばさんでもない。母親も私もジョンと仲... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 食3

     BGMは“Bill Withers”が唄った反戦歌だ。  「ニイタカヤマノボレ一二〇八」の電信が配信され攻撃準備に日本艦隊は入った。宣戦布告が手違いで遅れたこと、アメリカ側は攻撃の情報を得ていたとの推測もあるが、事実としてあるのはあくまでも奇襲だ。日本の行為は「恥知らずな蛮行」、「背信行為」、「... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 食2

    「感謝は必要だけど、それが崩れてしまうんですか?う~ん、わかんない」 「BGM替えますね」 David T. Walker (The Crusaders) - Chain Reaction  生物(者)にとって生きる上で最も重要なことが食べることだ。人の命は食事があって成り立っている。すべてを自給... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 食1

     “David T. Walker”の“Soul Food Cafe”をBGMに。ドラムは私の友達の“N'dugu”だ。彼が「そう」言ったのだから仕方ない、友達でいてあげよう、、、おいっ!  実はこれ、ライブ会場でサインを頂き、写真を撮ってもらおうとカメラを出した瞬間、店員が飛んで来てカメラを取り... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 島国2

     ビールに限らず、自国の文化である日本酒も出荷量の90%以上は紛い物だ。とかく日本人は混ぜ物が好きなようだ。  多くの日本人は曖昧さを好み、美と奉り立てる人もいる。奥ゆかしさ、謙虚さとはまったく別もので、日本人は人に流され己の意思を持たないから曖昧であるしかなく、断言することが出来ない民族だ。それ... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 島国1

     私は自家用車の利用は必要最低限に留め普段の移動手段は自転車である。車の利用は月に一度あるかないかで、重いものを購入する以外使うことはない。昔みたいに灯油も米も配達が可能であれば、私の環境では車は必要ないものだ。雨で自家用車を利用することもなく、公共交通機関を利用すればこと足りてしまう。  自転車... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 思い出

    「いらっしゃいませ」 「早すぎちゃいましたか?」 「大丈夫ですよ。今、DVD探してますから少し音待ってくださいね。お飲み物は?」 「ビーフィータージンをロックでお願いします。全種制覇ですね、これで」 「まだまだ。隠してますけど、ジン発祥の地オランダのジンがありますから」 「え~そうなんだ。じゃあ次... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” ビジョンなきビジョン

     アメリカで35年間続いたテレビ番組“Soul Train”のVTRの中から“Funk”をかけてみたいと思う。 Release Yourself - Graham Central Station  ヴォーカルとベースを弾いているスラップ奏法の創始者“Larry Graham”とは、“Crusade... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 日本の心2

     「タコのマリネ」は玉葱と大葉、ケッパーの実をみじん切りにし、オリーブ・オイルとポン酢を使う。バジルやワインビネガーを使うことが本来のあるべき姿であろうが、大葉と醤油と柑橘果汁を合わせたポン酢を使っている。クリームチーズの冷奴風は、角切りにしたクリーム・チーズを豆腐に見立て、冷奴を頂く要領で召し上... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 日本の心1 

       今日はジャズでもかけよう。ブランフォード・マリサリス、弟のペット奏者ウイントンとコンビを組み、世界中で人気を得たサックス奏者だ。 Branford Marsalis Quartet  彼は以前こんなことをインタビューで語っていた。 「日本人にジャズが理解できるわけがない」  ドアベルが鳴り客... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” お~キャロル3

    「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」 「こんばんは。今日はえ~っと、どうしよう、ターキーもらおうかな、ロックで」 「かしこまりました。しばらくお待ちください」  久し振りの顔合わせに女性3人の会話が弾んでいいるようで、微笑ましい。BGMを流して聴けるようにヴォーカル曲は外そう。クルセイダーズ... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” お~キャロル2

       キャロル・キングが1967年、アレサ・フランクリンに提供した楽曲で、“The Kennedy Center Honors”でのパフォーマンスをDVDに入れた。 Aretha Franklin (You Make Me Feel Like) A Natural Woman - Kennedy ... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” お~キャロル1

     “The Loco-Motion”多くの方が一度は耳にしたことがある曲ではないでしょうか。“Little Eva”が大ヒットさせたナンバーで、ハードロック系バンドのヴァージョンがソフトバンクのCMに使われてもいました。 Little Eva - Loco-motion(1962)  作曲がキャロ... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” Jazz3 

     電子楽器の普及はジャズの世界にも取り入れられ、モダン・ジャズを牽引したマイルス・デイヴィスが試行錯誤を繰り返し完成させていく。賛否両論あるが正しくジャズである。  そしてマイルスを電子楽器でサポートしたミュージシャン達が、後のジャズ・ロック、フュージョンシーンを牽引し作り上げていく。これもすべて... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” Jazz2

     ジャズは多くの様式を持ち、時代の流れと共に姿を変えてきた音楽である。ジャズ好きの多くが「70年代に入りエレクトリック楽器を多用し演奏されたものはジャズではない」と言う。私にはその言葉の意味がよくわからない。使う楽器の決まりなどあるわけもなく、リズムにしてもより多くのものを取り入れて発展してきた。... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” Jazz1

     ジャズ、何か取っ付き難い音楽かもしれない。ジャズにヴォーカル曲もあるが、多くの曲には歌詞もなく、楽器での演奏が繰り返される。そして、やたらと長い。歌詞があり、3分程の時間に集約されたポピュラー・ソングに慣れ親しむと、多くの違和感があり、理解するには難しいと感じてしまう。  理解することなどさほど... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 王様

     さぁ、店のオープンだ。今日は何をかけようか、キング、キング、キング、って、この手の音楽、やたらと多いのがキングだなぁ~。佐藤さんや田中さんみたい。 「この前さぁ~キングのアルバム聞いたんだけど」とか言われても誰を聞いたのかさっぱりわかりゃしない。  フレディ・キング、アール・キング、ベン・E・キ... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 美

     11月がもう間もなく終ろうとしている。1年など瞬く間に過ぎ去ってしまう。繁華街のクリスマスの飾り付けが、時の流れるのを一層、早く感じさせるのかもしれない。  人が持つ時間は同じであるはずだが、感じる長さは人それぞれであろう。特に加齢を重ね、時の流れを早く感じる。以前に読んだ本の一説を思い出した。... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 変装3

       インフルエンザ・ワクチンは予防の観点からは、まったく接種する意味はないと私は判断している。しかし、私が無駄と判断したように、意味のあることと判断し接種する方を否定するつもりはない。ただ、問題なのは、人、行政も含み、これらに流され接種してしまうことを懸念している。己の意思をしっかりと持つべきで... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 変装2

    「ちょっとBGMチェンジしますね、さすがに日本のバンドでは」 Barry White-Just The Way You Are  ビリー・ジョエルの「素顔のままで」をバリー・ホワイトがソウルフルにカバーしている。 「まぁ、お呪い、みたいなもんですけどね、ワクチン接種」 「そんな~、お呪いだなんて。... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 変装1

     毎年この時期になると、インフルエンザの流行の兆しが見え、街にはワクチン接種を啓蒙するポスターが至るところに掲示される。行き交う人のマスク姿もよく見かける。  マスクをする理由は、感染を防ぐ為なのであろうか?それとも、人に感染させないように努めているのであろうか?中には顔を隠すためにしている人もい... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” お笑い系R&B

     店を開けたものの、ノーゲストのまま4時間が過ぎようとしている。こんなときは映画でも観るのがいい。それも底抜けに楽しい映画、笑うしかないのだ。レコードを外し、DVDを入れ、モニターのスイッチを入れていた。 選んだDVDは、1980年公開(日本では翌年の公開)の“The Blues Brothers... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 壁

     “Soul”、“R&B”界において巨大な勢力を持った“Motown”が、ポピュラー志向に傾倒したのに対し、サザン・ソウルとも呼ばれ、アメリカ南部の泥臭さを前面に出したレーベルも存在していた。テネシー州メンフィスに本拠地を置く、“Stax”である。 Otis Redding Sings Respe... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 車の街

      営業時間前、自転車で繁華街を通り抜け、大通りに面するスーパーに少量の買出しに出た。繁華街は車で埋め尽くされ、日常的に違法駐車が行われている。狭い通りを行き来する車も、通行を妨げられ苦労しているようだ。  エコ、規律、道徳を多くの人が口にし訴えているが、この車の状況を見れば、上辺だけの人が大多数... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” 魔法

       店のオープンである。表の看板に電気を点しに外へ出ると、雨が降り、肌寒さを感じる。今日も暇な一日になりそうだ。もし、私に魔法が使えたなら、雨を止ませ、カウンターは素敵なお姉様で溢れ、、、って、止めておこう、悲しくなるだけだ。  BGMを考えていても、魔法が頭から離れない。そうだ!このおじさんが... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” Gospel

     私は無信仰が故に、教会の礼拝で歌われる賛美歌に興味はないが、“Gospel”は別物である。教会で歌い始め、その後、世界的スターに登り詰めたシンガーも多く、アフリカ系アメリカ人の音楽を語る上で、決して外すことはできない。 What a Friend We Have in Jesus - Cissy... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” Blues

     バーカウンターの中には、酒を並べた棚の上に裕に1000枚を越えるレコードが並ぶ。“Delta”と分別された中から一枚を選び、ターンテーブルに置き針を落とした。 Robert Johnson- Crossroad  コロンブスがアメリカ大陸に侵略をし、100年程経った1619年、アフリカ西岸から、... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI” ヴォジョレ

     17:00 バーのオープンである。オープン一曲目のBGMは決めていた。理由はただ好きなだけである。“THE CRUSADERS” 1970年代に活躍したアメリカのジャズロックバンドで、都会的に洗練された音ではなく、アメリカ南部の泥臭さを持ち、根っこにはしっかりとブルースを感じる。このバンドは多く... 続きをみる

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  • “Soul bar-IORI”  開店準備

     街路樹が葉を落とし始め、もう間もなく冬が訪れようとしている。街にはクリスマスの飾り付けが始まり、寒さが増していくと共に感じる寂しさを、紛らわしてくれる。  繁華街から外れた路地裏に、一軒のバーをオープンさせる。ソウル・バー、魂のバーである。ちなみにSeoul、韓国のソウル特別市は関係ないので、、... 続きをみる

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  • 「家族」 帰郷

     一行が東京に戻るとすでに日は落ちていた。昨夜見た星空は何処にも見えない。英子は雪子に三島までの乗車券と特急券、そしてタクシー代を渡し、 「私と敏也さんは、ここから別件で出かけますので、明日はしっかりと身体を休めてくださいね」  雪子と綾香、そして清流荘のメンバーは伊豆へ、英子と敏也は東北方面に向... 続きをみる

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  • 「家族」 旅行 2

     翌朝、宿が指定する時間の朝食を待っていては行程に無理がある。予約の際に、何かしらの代替ができないか打診したが、対応できないとの返事であった。朝食はコンビニで買い込んで八ヶ岳を目指した。  八ヶ岳とは特定の峰を指した山の名前ではなく、いくつもの山が連なった連峰である。南北に別れ、併せて20km以上... 続きをみる

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  • 「家族」 旅行 1

       敏也が提案していた旅行が決まった。遊びではなく、あくまでも研修だ。子供が産まれたばかりの幸も、実家に子供を預け参加することになった。  早朝、三島から東京へ一旦出るのだが、向かった先は、新幹線ホームではなく、在来線だ。 「え~新幹線じゃないんだ、もう、ケチっ」  綾香の文句にも敏也はニコニコ... 続きをみる

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  • 「家族」 決断 2

       サイクリングを終え、カフェに戻った二人に雪子と綾香が噛み付いてきた。 「もう、今日は休みでお天気いいから、みんなでサイクリング行こうって思ってたら、二人ともいないんだもん」 「ほんとよね~あれ?、先生と英子さんの自転車ない!って」 「で、どうだった?デート」 「ええ、とっても楽しかったですよ... 続きをみる

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  • 「家族」 決断  1

       「綾香の作成してるホーム・ページがすごく好評で、また、見積もりの依頼が来てますよ。写真から何もかも一人で抱えてるんで、スタッフ募集かけましょうかね」 「うん、一度相談してみないといけないけど、そんなに無理して広げる必要もないんじゃないかな。綾香が出来る範囲で仕事をこなしていけばいいし」  敏... 続きをみる

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  • 「家族」 最後の舞台

     山岸のCDが発売され、順調にチャートを上げていくものの、あまりの変わり様に酷評されることもあった。時代の流れと共に多くのことが様変わりしていく中、音楽も姿、形を変えていく。ただ、山岸はこのCDで、リズムや、奇抜とも思える進行など形は変わったが、自分の音楽の本質は何も変わらないことをメッセージして... 続きをみる

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  • 「家族」 友が残した宝 2

     伊豆に戻った敏也に一本の電話が入った。 「おい、敏也、ソーナイスに顔出したってな、オーナーから聞いたよ。で、写真も辞めちまって、お前どうせ暇してんだろ?ベース弾けよ、ベース。いねーんだよ、いいやつが」  大介と自分を世に出してくれた山岸であった。相変わらず人の都合など一切気にしない男だ。 「な、... 続きをみる

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  • 「家族」 友が残した宝 1

       敏也は料亭を後にして、大学を辞め音楽にのめり込んだ街、新宿に来ていた。まだ、箱バンドとして活動したライブ・パブはあるのだろうか、ふと気になり、吸い寄せられるように身体が向いていた。多くの店が様変わりしているが、ネオンの数は変わることがない。  “Jazz live So-Nice” ネオン官... 続きをみる

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  • 「家族」 カポクォーコ 2

     敏也は雪子をテストしたわけではないが、料理を食べ確信をしていた。 「イタリアンは気取らない家庭料理をベースにしたもので、食を通し絆を深める素晴らしいもの」  日本ではバブル期にイタリア・ブームが沸き起こった。高級ブランドが紹介される中で多くのイタリア料理店が開業し、イタ飯と呼ばれ若者達のトレンド... 続きをみる

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  • 「家族」 カポクォーコ 1

     「おはようございます」  朝、チェックアウトの客を見送り、女将と坂崎夫婦がちゃりんこカフェを訪れた。雪子は買出しを綾香と英子に頼み、すでに仕込みに取り掛かっている。 「雪ちゃん、何でも指示してよね、今日は雪ちゃんが板長だから」 「あなた、板長って、おかしいでしょ。シェフって呼ばないと」 「幸さん... 続きをみる

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  • 「家族」 展開 3

     雪子はカフェの営業を終えると、自主的に清流荘の厨房に足を運んでいた。洗い物を手伝いながら、坂崎の仕事を見て得ようとしている。坂崎からは、作り上げる料理はもちろん、一切の食材を無駄にせず、感謝の気持ちを忘れない姿勢にも学ぶことが多い。そして坂崎は、本質を見る大切さを雪子に説く。 「食材の高い、安い... 続きをみる

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  • 「家族」 展開 2

       清流荘のオープンを前に、綾香の作成するホーム・ページが完成した。サイクリング・コースは伊豆半島一周から、一泊二日、日帰りといくつものコースと、主だった観光地が綺麗な写真で紹介されている。  コース途中の休憩ポイント、トイレの情報はもちろん、サイクリスト歓迎を掲げる店も増え充実している。店主の... 続きをみる

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  • 「家族」 展開 1

       ちゃりんこカフェに無事に戻った綾香に、敏也はホーム・ページの更新を頼んでいた。 「清流荘の紹介を加えて、サイクリング・マップや観光案内を入れていきたいんだ。サイクリング・コースにはトイレや休憩ポイント、あと、危険箇所には迂回路があれば案内できるといいな。それから、コンビニ、飲食店に駐輪用のラ... 続きをみる

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  • 「家族」 異変 4

       敏也は英子と共に東京にある料亭に足を運んでいた。以前よく通い、板長とは付き合いが長く信頼関係も出来ている。予約の際に個室ではなくカウンター席を頼んでた。  久しぶりに頂く板長の料理に自然と顔も綻びる。そして敏也は何の前触れもなく直球を投げ込んだ。 「板長、私に料理人をお貸し頂けないでしょうか... 続きをみる

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  • 「家族」 異変 3

     綾香が姿を消してから一ヶ月あまり経っていた。綾香を思う気持ちに敏也も英子も変わることはない。特に英子は、夜一人になり涙することもある。  15時を回った頃、カフェに和服を着た女性と連れの男性の客がいる。ランチから滞在し数時間が経ち、これといった会話が弾んでいる様子もない。店内の客がこの二人となっ... 続きをみる

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  • 「家族」 異変 2

       綾香は手始めに、雑誌の連載で秘境駅を訪ねる撮影を行っていた。山間に進むローカル線の旅は美しい景観が広がり、綾香も楽しんで撮影に挑んでいた。  初回から数回は写真の出来も素晴らしく、好評を得ていたのだが、回数を重ねるごとにクオリティは下がり、写真から伝わるものが消え失せている。英子は心配をし、... 続きをみる

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  • 「家族」 異変 1

     綾香、知明子、敏也が伊豆に移り住み、そして雪子が東京から来ておよそ3年が過ぎ去った。  知明子はちゃりんこカフェの店長として、また、敏也の撮影を影からサポートし充実した日々を送っている。  雪子は料理の研究を怠ることなく、本格的なイタリア料理にも挑んでいる。 「マスター、私はパスタだけではなく、... 続きをみる

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  • 「家族」 雪子 3

       しばらくして車のライトがカフェを照らした。綾香と敏也が戻り、二人で外に出迎えると、 「あ、ゆきねーだ」 と綾香が車の窓を開け手を振り、車から飛び出すといきなり雪子に飛びついている。そして敏也は、 「や、雪ちゃん、いらっしゃい」 とだけ言葉を掛け、車の荷物を降ろし始めた。4人で中に入れ込むとい... 続きをみる

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  • 「家族」 雪子 2

     雪子は決して裕福とまではいかないが、大手出版会社に勤め、趣味の自転車で遠方に出かけるぐらいのゆとりは十分にある。今までは奨学金の返済があり貯蓄に回すだけの余裕はないが、この先は可能だ。ただ、自分が求めているものは何かを考えたとき、簡単に答えなど出ることではないが、今の生活で得られる事ではないと感... 続きをみる

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  • 「家族」 雪子 1

     翌日、問題なく敏也は目を覚まし、開店の準備をすすめると、自転車で来た一人の女性が外で待ち、英子が中でお待ちくださいと声をかけている。 「いらっしゃい、今日は早いね。すぐコーヒー淹れるから少し待ってね。それにお一人?」 「はい、今日は一人なんです。昨夜から三島にいて、朝、飛んで来ちゃいました」  ... 続きをみる

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  • 「家族」 失態

     敏也の撮影はカフェの順調さとは反対に進捗は思わしくない。単に富士を写すだけなら多くの写真家が素晴らしい作品を残しているが、敏也は似たような作品を残すつもりはない。そして、今回の撮影では、綾香に自分の思う写真を撮るように指示をしており、綾香の目指す被写体をもとめ、山の奥深くまで足をすすめることもあ... 続きをみる

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  • 「家族」 開店

     店がオープンし、店内は淹れ立てのコーヒーの香りであふれ、BGMには爽やかなピアノ曲が流れている。綾香が敏也の膨大なCDコレクションの中から選んでかけていた。  CDは飲食店のBGM向きに発売されたもので、すでに廃盤であるが、業種、時間帯に別けセットで発売されていたものだ。クラシック音楽がポップス... 続きをみる

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  • 「家族」 新たな地 3

     住居の片付けも終わり、敏也は綾香を連れ行動を開始した。まだ本格的に撮影に入るのではなく、下見で下界での撮影ポイントを探していく。気になる情景があれば、季節、時間、また、どんな天候であればより良い写真に仕上げることが出来るのか、事細かに記録し撮影の計画を立てていく。もちろんシャッターチャンスがあれ... 続きをみる

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  • 「家族」 新たな地 2

     伊豆に引越しをした敏也は朝、自転車で10km程走り終え、ダンボールがまだ片付かない店舗でコーヒーを淹れていた。綾香と知明子はまだ部屋から出てくる気配はない。  「すみません、お店やってますか」  サイクリング途中の20代半ばと思われるカップルが、駐輪ラックに掛けられた敏也の自転車を見たのであろう... 続きをみる

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  • 「家族」 新たな地 1

     綾香がギャラリーに来て5年が過ぎようとしている。  夏期の低山での撮影にはアシスタントとして敏也に同行し、写真に益々のめり込んで行く。写真の上達も早く、現像をしている佐々木も綾香の感性には驚くばかりだ。  長野から来た知明子も今年33歳を迎え、若くして苦労した長野での生活を振り返ることもなく、カ... 続きをみる

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  • 「家族」 ちあねー

       敏也は佐々木を伴い長野を訪れていた。出発の前に、 「夏までに、英子さんに山のことを詳しく教えてもらい、トレーニングをしっかりやって体力を付けておけよ」 と綾香に伝えていた。幸い自転車は心肺機能を高める為にも適しており、足の筋力アップにも、普段使うギアを一段上げ、回転数を減らさないことでより鍛... 続きをみる

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  • コラム 「音楽、音学、音が苦」

     なんだか訳のわからないタイトルで始まったコラムです、、、汗  これ、最後までわけのわからない内容と思いますので、、、ご勘弁を  音楽が好きな方って多いですよね、私も大好き。音を楽しむ、と書いて音楽 楽しいことは、ほんといい事。世の中、楽しいことだけなら、どれだけ幸せなことなのか、、、おっと、楽し... 続きをみる

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  • 「家族」 敏也 3

       その後、敏也と大介には大きな転機が訪れ、日本を代表するペット奏者山岸のツアーに参加しないかとオファーが入った。断る理由があるとすれば、今の安定したギャラがツアー終了後になくなることぐらいだ。20代前半の若者に、守りは必要ないであろう。バンドを抜け、およそ2ヶ月間山岸に雇われることとなる。  ... 続きをみる

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  • 「家族」 敏也 2

     ピアニストとドラマーを雇い、「高井義男4」として東京でのライブがスタートした。店の形態もあり、聞いてる客はほぼいない。疎らな拍手でステージを終えるとドラマーの佐藤大介が寄ってきた。 「ナイスベース!いい感じだな。今日はおとなしく叩いて君のプレイじっくり聞いてたんだけどさ、うん、いい感じ。唄ってる... 続きをみる

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  • 「家族」 敏也 1

     敏也は京都の大学に進み、この頃からクラブ回りを始め、プロのミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせた。中学からギターを始めていたが、ジャズクラブや他のプレーヤーから圧倒的に重宝されるベースをプレイしている。  ギターから転向したこともあり、ベーッシックなラインを取るだけではなく、メロディアス... 続きをみる

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  • コラム 「大志」

     昨夜、みなさんのブログを拝見させてもらった中に、素敵な言葉が載せられていたいたブログがあり、改めて感動をしていました。 「青年よ大志を抱け」  明治初期に、札幌農学校を開校し、キリスト布教にも努めたクラーク氏の言葉です。上記の言葉はあまりにも有名でご存知の方も多いでしょうが、そのブログには 「こ... 続きをみる

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  • 「家族」 夫婦 2

     敏也は渡辺夫妻に夫婦の理想の形をイメージする。婚姻後、20年近くの歳月が流れるがお互いを認め合い、人目を気にすることなく仲睦まじい夫婦である。  家族への愛も何時しか薄れ、お互いに関心もなくなるのが多くの日本人であると思う。そしてまた敏也にも夫婦の危機が迫っている。  年老いたとしても二人の愛、... 続きをみる

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  • 「家族」 夫婦 1

       新年が明けるとギャラリーでは、元旦から家族写真の撮影に予約の客が訪れる。写真館で撮影は行われるのだが、ギャラリーではカメラマンに敏也を指名する客を招き、趣の変わった撮影が行われる。  ここ数年来、毎年3日の最終日に予約を入れる客がいる。映画俳優の渡辺晃と啓子夫妻だ。敏也が渡辺の主演映画の音楽... 続きをみる

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  • コラム “NB”

       最近街中でこのロゴをよく見かけます。靴もウエアも、、、  そしてなんと自転車まであるんですよね、びっくり。きっと委託生産でロゴ貼ってるだけって思うんですけど、、、ちなみに、私もこの ニューバランス のチャリ用ウエア持ってます、はい。本職は「靴屋さん」ですね。  で、今回のコラムはこの「ニュー... 続きをみる

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  • 「家族」 登山資格 2

     敏也は連休中も、自宅に戻る気配は見せず、カフェに滞在を続けている。もちろんカフェでの宿泊は全ての従業員に許されるもので、役員とて例外ではない。休日前夜には知人、友人を伴いカフェで宿泊し、早朝に山を目指す写真館のスタッフも多い。  綾香は敏也から借りた本に集中し、連休中の時間の多くを読書に費やして... 続きをみる

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  • 「家族」 登山資格 1

     クリスマスを終えカフェはしばらく休暇に入る。年間を通じ連休はこの期間だけで、敏也も撮影の日程をこの日に合わせ調整をしている。  カフェの前にそびえ立つ山は中腹辺りまで雪に覆われた。  綾香は英子と出かけたサイクリング途中で、休憩に立ち寄ったコンビニの駐車場から、山を眺めている。英子が店から出て ... 続きをみる

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  • 「家族」 綾香の写真 2

       綾香が撮影した写真は、レンズが広角一本だけに限られていたが、風景を写し撮るだけに留まらず、情緒ある古めかした宿、部屋の小物、宿の食事にと被写体は多くに及び同室であった英子の寝顔までも収めていた。  風景写真は広角レンズの持つ強みを活かし、広がりのある風景を切り撮り、屋内の撮影では、広角レンズ... 続きをみる

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  • 「家族」 綾香の写真 1

     カフェ周辺の山々の頂は、うっすらと雪化粧を始めた。もう間もなく厳しい冬がやってくる。  インターネット上で多くの憶測が飛び交い、TVのワイドショーまでも巻き込んだ騒動は、結論など出さずとも何時の間にやら終息したようだ。人の興味などは次から次へ移り変わるもので、時間が解決をしてくれる場合が多い。 ... 続きをみる

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  • 「家族」 英子 2

     KEIは、地元、東京にある写真と音響の専門学校に籍を置き、学生の傍らモデルの活動をしていた。将来的な目標はまだ定まっていないが、製作に携わることを好んでいる。  モデルはスカウトされたことがきっかけであるが、学校で写真の勉強もし、写される側から見ておくことも役に立つと考え、励んでいた。  モデル... 続きをみる

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  • 「家族」 英子 1

     3人での撮影は滞りなく行われ、撮影の合間に綾香もフィルム5本分程撮りためていた。綾香がカメラを構えても、英子も敏也も何も口を挟むことはなく、本人の思うように撮らせている。決して放置ではなく、聞かれることにはきちんと答えている。  写真に正解、不正解などはなく、撮り方を定めたルールも存在しない。意... 続きをみる

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  • コラム 「いい写真」

       長編「家族」をお読み頂いてる方に、感謝、感謝です。  物語はまだまだ、あ~なって、こ~なって、続いていきます。 「え?まだ続くの~、読むの面倒臭いなぁ~」な~んて思わないで、読んでくださいよ、○ーちゃん!  で、今日はちょっと一服っと、、、  ブログでみなさんよく写真を載せられて、お好きなん... 続きをみる

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  • 「家族」 思い、重い、カメラ 2

     綾香はザックにカメラを入れ、写真館に自転車を走らせた。カメラのメンテナンスを佐々木に依頼し、レンズの選択に入っている。佐々木のアドバイスもあるだろうが、綾香がどんなレンズを買うのか、英子も敏也も楽しみにしている。  「これが、英子さんのカメラで、先生はこのカメラで写真を始めたんだ」 カメラを手に... 続きをみる

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  • 「家族」 思い、重い、カメラ 1

       綾香はフィルム一眼の購入は諦め、普及品のデジタル一眼を視野に購入を考えている。   「無理なものは仕方ない、諦めよう」  自身に言い聞かせるほかはない。店舗でローンの分割支払いの案内を見て佐々木に尋ねたが、 「ローンを組んでまで買うことは、先生も英子さんも反対するよ。もちろん俺も反対」 と強... 続きをみる

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  • 「家族」 挑戦 3

     綾香はアシスタントとして同行できる日を楽しみに、日々、カフェの仕事をこなしながら勉強をしている。    特にレンズの特性に興味があるようで、描写の違いに驚くばかりだ。知れば試したくなるのも不思議ではなく、綾香は英子にカメラを買うことの許可を得ようとしている。英子は、自分が働いたお金で何を買うこと... 続きをみる

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  • 「家族」 挑戦 2

       敏也への撮影依頼は、本社を写真館からカフェに移しており、会社役員である英子の元に入る。  今回舞い込んできた依頼は、小説を元にカット写真を載せ、週刊誌紙上で連載をしたいとのことだ。有名小説家とのコラボでは、敏也はまず承諾しないであろうが、無名小説家の処女作品であり、小説の内容次第で受ける可能... 続きをみる

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  • 「家族」 挑戦 1

     自転車を手にした綾香は、多くのことで前向きに捉えることが出来るようになってきた。  朝は英子と一緒に10km程走り、業務でも進んで写真館まで自転車を走らせる。行動範囲が広がり楽しくて仕方ない様子だ。また、交通量の少ない安全な道を選ぶことや、絶えず周囲の車、人にも注意を向け、相手の動きを見て自分が... 続きをみる

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  • 「家族」 憂鬱な日 2

     敏也の合図にカーテンが開けられ、その瞬間にクラッカーが鳴り響いた。  驚いた綾香は奇声を発しのけぞっている。  「綾香、お誕生日おめでとう」 と英子の大きな声が響いた。その後に続きスタッフや常連客から繰り返しおめでとうと声がかかり、拍手で迎えられ、敏也のエスコートで席の中央へ進む。誕生日など祝っ... 続きをみる

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  • 「家族」 憂鬱な日 1

     綾香がギャラリーに来て約半年が過ぎ去ったが、母親から捜索願いが出されることはなかった。撮影で留守の多い敏也の顔はしばらく見ていない。カフェの仕事は順調であるが、写真が頭から離れることはなく、交代でアシスタントとして同行する写真館のスタッフを、羨ましいと思うこともある。  9月25日、今日は綾香に... 続きをみる

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  • コラム 「カレーは英国料理」 2

     日本にカレーが登場した当時、インドは独立国家ではなくイギリスの植民地で、日本との交易が直接あったわけではありません。インドの食べ物らしきカレーは、イギリスを経由して日本に伝わっていますが、そもそもインドにはカレーなどと言う料理は存在せず、イギリス人の発案で作られています。  しかし、インドと言え... 続きをみる

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  • コラム 「カレーは英国料理」 1

     子供の頃、学校から帰宅して、玄関を開けカレーの匂いがするとワクワクした覚えがある。 ♪きょおっのごっはんはか~れ~だか~れ~だ~~♪  心の中で叫んでいた言葉にメロディまで付けてたのが、今、思い出すと、笑える。  異国料理であるにも関わらず、国民食と言ってよいほど市民権を得ている料理ではないだろ... 続きをみる

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  • 号外 ファッツ・ドミノ

     10月24日、ロックンロールの創始者とされるファッツ・ドミノ氏が亡くなられました。享年89歳で自然死とのことです。  ロックンロールは多くの音楽家に影響を与え、現代音楽のベースであり、後世に受け継がれるべき音楽だと思います。  ご冥福を祈ると共に、彼の偉業に拍手を送りたい。  人の死は辛く悲しい... 続きをみる

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  • 「家族」 対面 3

       カフェではスタッフの休憩時間で、いつものように常連客とスタッフが席を同じにしてコーヒーを楽しんでいる。戻った英子は、  「もう心配して損しちゃったわ、あの子ったらスタッフの仕事ちゃっかり取り上げて、歓声上げながら楽しんでるんですもの」 と笑顔いっぱいではなすと、  「もう、しっかり綾香のお母... 続きをみる

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  • 「家族」 対面 2

     翌日の朝、英子と敏也は自転車で出かけ、綾香は帰りを待ち敏也の写真集を何度も見返している。  敏也の自転車歴は長く、撮影で自然と触れ合ううちに環境問題にも興味が出て、自ずと車の利用が減り自転車を楽しんでいる。自転車の活用は決して環境に配慮するだけではなく、運動不足、ストレスの解消にも十分に役立って... 続きをみる

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  • 「家族」 対面 1

       スタッフが食事を終え、くつろぎながら雑談をしていると、入り口から  「ただいま」 と一際大きな声が響き、スタッフは一様に席を立ち姿勢を正してその男を迎え入れる。みなで手分けして車から荷物を降ろす者、二階へと運び込む者とに別れ、てきぱきと片付けている。英子が近づき  「お疲れ様です」 と声を掛... 続きをみる

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  • 「家族」 新たな生活 3

       ランチが始まると同時に店は満席となり、待ちの客も出始めピークを迎える。キッチンは目の回る忙しさだが、その慌しさがホールに伝わることはなく、ゆったりとした食事が楽しめる。  コースに仕立てられたランチは洗い物が半端なく、テーブルの片付けと洗い物をしている綾香の顔からは笑顔は見られず、英子が気に... 続きをみる

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  • コラム 「フェイク食品」 2

       さ~て、小説の続きをと、勇んでPC前に構えたのですが、、、なんとまぁ~普段、皆様から頂くnice!より、コラムのが多いって、、、素直に喜んでいいのかしら、これ、、、 ってことで、急遽、泣きながら続きを書いてます、、、はい。  涙がこぼれないように上を向くと、「究極の一本指打法」でタイピングす... 続きをみる

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  • コラム 「フェイク食品」 1

     「家族」をお読み頂いてる方には、ほんと心から感謝しております。  小説のカテゴリーで初登場105位(11、616サイト中)、現代小説に於いては、、、なんと初登場3位(785)で、いきなり冠かぶってますです、はい。  「すっげーじゃん俺!」な~んて喜んでみたものの、「これはちょっと変でしょうに」と... 続きをみる

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  • 「家族」 新たな生活 2

       営業が始まるとすぐに客が集まり出し、コーヒーと軽いサンドウィッチを楽しむ。決して安い価格ではないが、調度品は見合ったものを設え、コーヒーも自家焙煎された豆を注文を受けてからミル挽きし、一杯一杯丁寧にドリップされ、コーヒーフレッシュは使わず、生クリームが提供される。  言うまでもなくコーヒーフ... 続きをみる

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  • 「家族」 新たな生活 1

     朝、綾香が目覚めると、身体にフィットしたスポーツウェアを身に纏い、出かける準備をしている英子の姿があった。  「おはよう綾香ちゃん。私ね、これから30分ぐらい自転車に乗ってくるからその間少し待っててね、お腹空いてたらご飯用意してあるから食べててね」  楽しそうに出かける英子を、綾香は自転車置き場... 続きをみる

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  • 「家族」 旅立ち 4

     食事をしながら綾香は、  「今日、初めて富士山見たんです。綺麗だったぁ~。それにね海も初めてみたの。そのとき思ったんだけど、地球って本当に丸いかも知れないなって、変でしょ、私。地球が丸いなんて見たこともないし、感じたこともないし」 と微笑む。英子はうなずきながら話を聞き、  「そうね、綾香ちゃん... 続きをみる

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  • 「家族」 旅立ち 3

       英子は運転をしながら綾香に話しかけるが、返事はするものの自分から積極的に話すことは何もなかった。  車は市街地を外れ、森の中にある建物の敷地に停まった。山の麓に丸太で造られた建物は、温もりを感じ辺りの景観を壊すことはない。  中に入ると1階はギャラリーで、販売用写真や非売品の写真、金色に塗ら... 続きをみる

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  • 「家族」 旅立ち 2

     少女は普通列車を乗り継ぎ、住所と同じ名前の駅に降り立ったが、写真の風景などどこにも見当たらない。  交番に入り写真集に出ていた住所を尋ねると、対応した初老の警察官は、住所、氏名、生年月日など多くの質問をし、入った無線に返事をしてその場所をようやく教えてくれた。それはただ、ロータリーを挟んで目の前... 続きをみる

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  • 「家族」 旅立ち 1

     夜明け前の暗がりの駅ホームで、始発電車を待ち、一人の少女がベンチに腰を降ろしている。  中学を卒業した翌日に、使い古したザックを背に家を出た。この時期はまだ冷え込み、手を丸めては息を吹きかけ擦り合わせ、膝を小刻みに動かしている。15年もの間過ごして来たが、生まれ育った土地を離れる寂しさはない。 ... 続きをみる

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  • ご挨拶

     私の拙い文章で綴った紀行をお読みいただいた方に、心よりお礼申し上げます。  さて、ここで「列車と自転車の旅の追憶」を閉めさせて頂き、新たに小説を連載させて頂きたいと考えております。もちろん架空の物語です。  常日頃から感じていることを小説に盛り込み書いていきます。素人のしかも初めて書く小説で、文... 続きをみる

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  • 大海原 Dolce

       相方と別れ、車を見送る通りには桜並木が続いている。もう一月も経てば素晴らしい景観を見せてくれるであろう。満開の桜をイメージし交差点を渡り木を間近にすると、驚くほど幹が太く年輪を感じさせる。何十年とこの地に立ち続け、街の、人々の移り変わりを見てきたのであろう。 「また来月来てみよう、絶対」  ... 続きをみる

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  • 番外 危険なドラッグ

       人には多くの考え方があり、何を信じるかは人それぞれで、他人にとやかく言われる筋合いではないと思う。  イエス・キリストを信じることも、UFOを信じることも、はたまたキャバクラのお姉ちゃんの言うことを信じるも、本人の勝手だ。逆に何を信じないかも同じで、私は外科疾患以外で医者と薬を信じてはいない... 続きをみる

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  • 番外 思い出

    「大海原」の第二章が終わったところで ちっと一服っと ネタを探して、あれこれしてたら懐かしい写真が見つかったので、、、 1970年代、プログレッシブ・ロックなんて音楽が流行りました 「進歩的」、「斬新的」なんて意味なのでしょうけど、クラシック的なアプローチをしたロックの形式なのかな。ちょっと難解で... 続きをみる

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  • 大海原 Second piatto 出会い

       相方の営む居酒屋は、出来合いのパック詰めの食材を皿に盛るようなことはせず、また、お店で使う野菜は、身内が販売目的ではない畑で、必要最低限の農薬の使用で生産をしていると言う。手作りの味をコンセプトにした居酒屋だ。繁華街への導線から外れ、しかもビルの二階で、駅周辺とは言うものの、決して立地に恵ま... 続きをみる

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  • 大海原 Second piatto 頂くと言うこと

     バーを出て、駅ビルテナント内のチェーン店に向かった。常連から 「あそこの出し巻きがおいしい」 と言われ試してみたいと言う。美味しいわけないのに、、、と思いながらもお付合いだ。お店を営んでいれば、競合店に行く機会はそうそうあるものでもないであろう。  美味しい、不美味いは、個人の好みもあり適切な表... 続きをみる

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  • 大海原 Second piatto 素敵な日

     対面を果たし挨拶を済ませ、さっそく飲み屋に直行である。どんな店が良いのか希望を聞かれたが、ここはお任せする以外はない。  商売がら気になるのであろう。近くに平日は多くの客で賑わう立ち飲み屋があり、そこに行きたいと言う。サラリーマンが多くを占める街は、土曜日は空席もあり、すんなり入ることが出来た。... 続きをみる

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  • 大海原 Second piatto 難しい問題

     携帯の着信音が鳴った。うとうとしたのであろう。ザックの中から電話を探し確認すると先方からメールが入っている。 「娘の用事で外出しており、連絡が遅くなりました。日立駅に来ることできますか?」 「もちろん行けますとも!」  心の叫びと同じメールの返信をしていた。数回メールをやり取りし、17時に日立駅... 続きをみる

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