紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

出来ることならば初話からお読み頂ければ幸いです。

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 連載中

「家族」 最後の舞台


 山岸のCDが発売され、順調にチャートを上げていくものの、あまりの変わり様に酷評されることもあった。時代の流れと共に多くのことが様変わりしていく中、音楽も姿、形を変えていく。ただ、山岸はこのCDで、リズムや、奇抜とも思える進行など形は変わったが、自分の音楽の本質は何も変わらないことをメッセージしていた。敏也にもそれが十分に理解できることであった。


 そんな中、由香の唄った「星になったあなたへ」がテレビドラマの挿入歌に使われることになった。ホールでのソロ・コンサートの話も持ち上がったが、由香は受けることをしない。


「私のいるべき場所、歌いたい場所は、小さなライブ・ハウス。この先もずっと変わることはない」


 CD発売後のツアー参加を頑なに拒んでいた敏也に、山岸が話を持ち上げ、ちゃりんこカフェに音響機材を運び込み、一夜限りのライブが入れ替えで行われる。ホーム・ページ上で告知され、店の定休日に合わせたため平日開催となったが、9000円のチケットはすでに完売だ。ベースは敏也が担当し、由香ももちろん参加する。


 当日、PAを担当する英子は、通常の倍ほどのマイクをセットしていた。店のセッティングを手伝っている綾香も雪子も、敏也のライブは初めてだ。


 ステージは山岸の曲を中心に構成され、敏也が発売していたCDからも3曲演奏された。ステージ後半には、スタンダードも含め由香に30分程時間が割かれ、アンコールに「星になったあなたへ」が歌われた。客席には由香の母、里子の姿もあり、この曲では、涙を抑えることが出来なかった。


 ステージが終り、メンバー、スタッフが打ち上げをしている最中、英子がCDをセットしている。英子はライブ録音した音源を、そのままCDに落とし込んでいた。敏也の最後のライブかもしれないと思い、録音していたのだ。


 音源のクリアーさに、山岸が、


「さすが英子だな。これ正規盤で売れるぐらい綺麗に録れてるよ」


 後日、山岸、敏也の共同名義でライブCDが発売された。


「What 伊豆 jazz ?  楽しきゃいいじゃん」


 山岸、敏也が追い求めてきたことの答えがCDタイトルに付けられていた。


                                      49



×

非ログインユーザーとして返信する

あと 2000文字

※は必須項目です。