紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

「家族」 展開 2

 
 清流荘のオープンを前に、綾香の作成するホーム・ページが完成した。サイクリング・コースは伊豆半島一周から、一泊二日、日帰りといくつものコースと、主だった観光地が綺麗な写真で紹介されている。
 コース途中の休憩ポイント、トイレの情報はもちろん、サイクリスト歓迎を掲げる店も増え充実している。店主の笑顔に吸い込まれるよう、立ち寄りたくなる写真が掲載される。メインはちゃりんこカフェ、清流荘であるが、決して前面に出さないことで、良い印象を与えているようだ。


 清流荘の新装オープンの告知も好評で、オープン後一ヶ月の週末の予約はすべて埋まってしまった。そして敏也がもっとも期待していたことが、現実となった。市の観光協会からコンタクトがあり


「御社のホーム・ページが素晴らしく、ぜひ、制作会社を紹介して欲しい」


 こうして綾香を室長にし、非営利団体を対象にしたホーム・ページ製作室が立ち上がった。


 この後、清流荘が新装オープンした。多くの信用を失ってからの再スタートであり、苦戦を強いられることも想定したが、順調にスタートを切ることができた。坂崎の料理と綾香のホーム・ページも大きく貢献しているが、何を差し置いても女将の取り組む姿勢であろう。


 女将の謙虚な気持ちが、今後の成功につながると敏也は信じている。そして、敏也は女将に伝えていた。


「今はじっと我慢だ。利益を上げることよりも、信用回復に全力をあげよう。スタッフに力が付いてから、人員を増やし、順次予約客を増やせばいい。そして、スタッフとその家族の生活を守れる自信が付いたら、私から旅館を取り戻しなさい」


「代々受け継がれてきた宿を、名前とともに残すことが出来ました。私にはそれだけで十分です」


「今の気持ちを忘れることなく、お客様に満足頂ける宿を目指そう。自分達に出来る精一杯のもてなしをすれば、必ず伝わる。一期一会ですよ、次はありません、お客様との間に。旅館を守り抜くのは女将、あなただ。そして後継者を育てなさい」


 そして敏也は、清流荘で預かる坂崎がいてくれる間に、駅前にイタリア料理店の開業を目論んでいた。
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