紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

出来ることならば初話からお読み頂ければ幸いです。

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 連載中

「家族」 新たな生活 1


 朝、綾香が目覚めると、身体にフィットしたスポーツウェアを身に纏い、出かける準備をしている英子の姿があった。


 「おはよう綾香ちゃん。私ね、これから30分ぐらい自転車に乗ってくるからその間少し待っててね、お腹空いてたらご飯用意してあるから食べててね」


 楽しそうに出かける英子を、綾香は自転車置き場まで見送った。
 
 自転車置き場は屋内にあり、他に数台の自転車と工具、部品が綺麗に整理され、まるで小さな自転車屋さんのようである。綾香にとって自転車は、歩くよりましな乗り物としかの認識はなく、楽しそうに出かけた英子の気持ちがあまり理解出来ない。


 英子は雨の日以外、朝起きると30分程自転車に乗る。30を越えた辺りから体型を気にし出し、自転車を始めたのだ。数ヶ月で体重は二十歳ごろの体重にまで戻り、体調もすこぶる良い。体型維持の秘訣を聞かれれば、迷うことなく自転車と答えている。英子に影響をされ、スタッフはもちろん自転車を始めたカフェの客も多いのだ。


 30分ほどで戻るという英子を、綾香は外で待つことにし、森に囲まれた外の美味しい空気を何度も深く吸い込み、木の葉を、土を手で触り香りを楽しんでいる。通りに出ると平野が広がり、奥にはまた遠く山脈が綺麗に見渡せる。


 英子が戻り、二人しての朝食だ。母親の用意してくれた朝食など、食べた記憶がない。食事中は綾香が積極的に自転車のことを訊ねたりして、ほんの少し自転車に興味を持ったようだ。そして英子は、


 「景色を楽しんだりするにはね、自転車の速度がちょうどいいの。風を感じ走るのはとっても素敵なの。ダイエットにもいいしね。だから、スポーツジムなんかでね、走ることの出来ないペダルを漕いでるだけのものは嫌だな」


と答えている。そのとき女性の声が聞こえ、お風呂場に姿を消して行った。英子からお店のスタッフと説明され、朝、自転車で通勤していて、軽く汗を流して仕事に入るのだと言う。お風呂から出た女性は、昨日、後姿を見かけた人で、


 「私は、山田貴子、26歳。宜しくね」


と自己紹介され、綾香が返すと、貴子は綾香を英子の隠し子かと思ったと話し、笑いを誘った。


 仕事までの時間はいつも英子とのおしゃべりを楽しんでいる。会話の内容は、料理や自転車のことばかりで、居ない人の悪口や嫌な会話はまったく聞こえてこない。唯一居ない人の話題は、


 「今日3時ぐらいには、先生がもどりますから」


と英子が話し、貴子は


 「あ~、緊張するなぁ~」


とつぶやいている。
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