紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” 人災1 

 「震災を忘れないで」


 昨日、この言葉を何度か見聞きした。誰が誰の為に発信している言葉なのであろう。
 衝撃的な状況を体験したものにとっては、精神的に自らを苦しめる体験は忘れたいものなのではないであろうか。私なら忘れたい。だが、実際にあの恐怖を目の当たりにした者であれば、忘れたくても忘れることなど出来ないであろう。
 犠牲者となった方への追悼の意味なのか。死者を偲ぶ気持ちは大切であるが、自然災害は毎年のように起こる事。犠牲者が少ない案件に関してはどうでもいいことなのか?自分の身内、親近者以外であれば、それほど深い悲しみに暮れることはおそらくないであろう。
 当事者以外に教訓を与えるべきものなのであろうか。自然災害は人の手で食い止めることなど出来やしない。
 報道する側が、視聴者に目を向けさせるために発している言葉なのかもしれない。当事者以外の人の記憶など大したものではない。


 BGMはこの曲で、、、何か違うか、、、



 カラン、カランとドアの呼び鈴が鳴り客の来店を知らせると彩香が顔をだした。いつものように紅茶を頼み、昨日中、多くのテレビで取り上げられた震災について語り出した。7年前の彼女は中学卒業の年だったと言う。



「それぞれ向かう進路を決めて旅立ちをしようってときに、同年の被災者には特に感じる物があるな~。でも結局ね、何もしてあげられなかったし、災害が自分の身に降りかからない範囲で起きたことを『よかった~』なんて正直思ったりもしたんですよね。今思うとそんなこと考えてた自分が無性に嫌になるんです」



「でもそれは仕方ないことだと思いますよ。海外の人であれば、自国でなくて良かったって思うでしょうしね。親近者に被災者がいなければそれでよしって考えてしまっても仕方ないんじゃないでしょうか」



「みんな悲しみを表すけど結局は対岸の火事ってとこですかね」



「歴史には多くの犠牲者があって成り立つ物がほとんどなんですよね。でも、その教訓を生かせずに同じ事を繰り返してしまうのが人間の浅はかさだとも思いますよ。それは多くの人が対岸の火事って認識があるからじゃないでしょうかね。まったく学習能力がないのが人かもしれませんよ」



「でも、自然災害なんて防ぎようもないし、どうすることだって出来ないじゃないですか」



「そうですね、自然災害は防ぎようがないですよね。ただ、自然から見れば災害でもなんでもないことが、人から見れば災害になってしまう。先ずここが根本に間違っていることじゃないでしょうかね。人にはただ自然の中で生かされてる生物のひとつだって認識がありませんから、自然の摂理に反した行いを繰り返してより被害を大きくしてしまってることも多いと思いますよ」



「あっ、原発なんてそうですね。あんなものがなければ助かった人もいるわけですからね、人災ですね」



「おっしゃる通り原発事故は人災ですし、人が造った物で命を落とされた方も多いと思いますよ。文明を発展させ、より多くの物を手に入れようとした場合、その反動も大きいことを忘れちゃだめですよね」



「多くの被害者の下に今の便利な世の中は作られているし、一度手に入れた便利な生活を捨てることもできませんしね」



「原発がなければ多くの被害は防げましたけど、原発の必要のない世の中を創ろうとは誰も思いません」



「原発って必要なんですかね」



「原発事故の後、私達日本人は何か変わりましたか?」



「う~ん、特には、、、」



                                      続く


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