紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” 豆2

「美味しい物が日常だったら、美味しい物はなくなっちゃいますもんね」


「決して私の日々の食事が美味しくないってことではないですよ。美味しくなるように自分の持ている知恵、技を費やして作ってますから。食材がそれほどかからないので、調味料は本物の良いものだけ揃えることが出来るんです」


「原材料も安心、安全の国産を選ぶことも出来ますしね」


「う~ん、加工品は国産表示って50%以上国産であればそう表示できてたんですよね。去年ようやく改正されて4年ほどかけて今後修正していくようですけどね」


「え、そんなもんなんですか、、、日本って国はいったい、、、でも、それって詐欺じゃないですか」


「日本政府が決めて、そのルールにのってやっていることですから、騙してはないですね。勘違いする方が悪いんです」


「そんなのおかしい!」


「ここをどこだと思ってるんですか?日本ですよ、日本。お馬鹿な指導者が導いてる国ですから、そんなことは何も不思議なことではないですよ。ほとんどの商品が国産表示ですけど、そもそも大豆の国内需給率って6%しかありませんので、有り得ないです」


 私は日本の農作物が安全とは思っておらず、それほどまでに国産に執着することはないが、地産消費の観点から国産を選んではいる。農薬の使用量を見れば中国、韓国、日本が飛び抜けて多く、国産農作物の安全は自国製品を愛するがあまりの思い込みか、外国産が危険と言われ、鵜呑みにしているだけかもしれない。または、日本人の奢り?


 昔、昔、日本の水田の畦道にはたくさんの大豆が植えられていたと言うが、もうその姿を見ることはない。大豆の根には多くの微生物が住み着き、大豆から送られる栄養でアンモニアを作り出す。そのアンモニアを大豆は吸い上げ、タンパク質に合成し、大豆には良質なタンパク質が多く含まれる。そして微生物が生産したアンモニアは水田にも流れ、稲の栄養となっていく。化学肥料などない時代にはうまく共生ができていたのであろう。味噌、お醤油、豆腐など大豆を原料に作られるものは日本人にとって馴染みの深いものばかりだ。


 味噌、お醤油は微生物が大豆を発酵させた調味料であり、発酵が複雑な味をもたらしてくれる。ただ、今の日本にその製法が守られている商品など多くはない。化学の力恐るべし、だが、味も違えば、食品添加物の多用も懸念される。日本が世界に誇る調味料は、日本人が伝統を守り受け継いでいくべき物ではないのであろうか、、、悲しい姿に落ちてしまった日本の伝統だ。


 調味料だけではなく、大豆は多くの加工品食品の原料である。水に浸した豆をすり潰し、水で煮て豆乳が出来上がる。豆の乳であって、赤ちゃん、野郎共がこよなく愛すお乳の豆ではない、、、馬鹿っ!


 その豆乳ににがりを加え固めた物がお豆腐。また、このお豆腐を凍らせた後に脱水する行程を繰り返し、出来上がるのが高野豆腐。一枚で豆腐4丁分ものタンパク質を誇る素晴らしい食品。そして、豆乳ににがりを加えずに煮るとタンパク質の薄い膜が出来上がる。これが湯葉で、豆腐の栄養分だけを凝縮したような素晴らしい食品だ。


 あと、大豆から作られる代表的な食品は納豆であろう。


                                      続く

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