紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

「家族」 綾香の写真 1


 カフェ周辺の山々の頂は、うっすらと雪化粧を始めた。もう間もなく厳しい冬がやってくる。


 インターネット上で多くの憶測が飛び交い、TVのワイドショーまでも巻き込んだ騒動は、結論など出さずとも何時の間にやら終息したようだ。人の興味などは次から次へ移り変わるもので、時間が解決をしてくれる場合が多い。


 カフェは相変わらず多くの客で賑わいをみせ、綾香も英子も忙しい日々を送り、敏也は佐々木を伴い積雪期の山岳撮影に入っている。敏也が発つ前、アシスタントの指名がかかることもほんの少し期待した綾香であったが、声がかかることはなかった。


 写真集でみた風景を思い描き


「何時の日か、あの中に立ちたい」


そう願う綾香であった。


 綾香が撮影旅行で撮り溜めた写真は、佐々木の勧めで、絞り値、シャッター速度、天候、時刻がメモされ、修正ポイントがあれば明確であり自身の教材となる。撮影記録を見た英子と敏也は感心すると同時に、綾香らしい記録も記され揃ってお腹を抱えることもあった。


「今、お腹空いて倒れそう 今日のご飯はなんだろう」


 撮影時の心境も大切なことかもしれない。


 綾香の撮った写真は完成度からすれば決して褒められたものではなく、構図から露出に至るまで改善の余地は十分にある。16歳の子が初めてカメラを手にし撮影した写真では当然のことである。ただ、敏也は綾香の持つ感性に驚きを隠せなかった。


 写真家には大まかに別けて二通りあると敏也は思っており、自ら経営する写真館のカメラマンスタッフに於いても例外ではない。


 記念写真や広告写真に向いたカメラマンか、己の個性、感性を前面に打ち出し、言うなれば芸術家タイプのカメラマンかである。これはどちらの写真家が上か下かの問題ではなく、写真の優劣でもない。目指すもの、己の性格によって分かれるのであろう。今は撮影で現場に入ることをしない英子も、敏也よりも数段綺麗な写真を撮ることも事実だ。


 需要の面でも広告写真などが多く供給する写真家も多い。後者であれば、受け入れられる市場も狭く尚且つ分散してしまう。また後者の場合、成功するしないも写真の優劣ではなく、時代背景、取り巻く環境にも大きく左右されるであろう。


 敏也は、綾香が写真を続けた場合、自分と同じ後者に属するのではないかと感じていた。


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