“Soul bar-IORI” Gospel
私は無信仰が故に、教会の礼拝で歌われる賛美歌に興味はないが、“Gospel”は別物である。教会で歌い始め、その後、世界的スターに登り詰めたシンガーも多く、アフリカ系アメリカ人の音楽を語る上で、決して外すことはできない。
What a Friend We Have in Jesus - Cissy Houston
奴隷制度の中、さらなる従順を誓わせるため、雇い主は奴隷として労働する者に聖書を与える。彼らは互いを助け合うコミュニティの場として、姿も形もない教会に集まり、聖書に出てくる言葉に自己の解釈をし歌詞にして、歌い、踊り始めた。ここに、“Gospel”の原型である「スピリチュアル」(黒人霊歌)が生まれたのだ。
奴隷制度解放後、キリスト教に改宗したもの達が、黒人霊歌にみられる独自のブルーノートとヨーロッパ賛美歌を融合し、神に捧げた歌が“Gospel”である。
“Gospel”を取り上げた映画で“Sister Act”邦題「天使にラブソングを」があるが、映画の舞台はマリア崇敬するカトリック教会で、“Gospel”はマリア崇敬のないプロテスタント教会で歌われてきた文化である。映画は本質とは異なっているようだ。作者は何かしらの意図があり、設定をカトリックにしたのであろう。
ドアの呼び鈴が鳴り、来店を知らせた。歓迎したくない20代前半の男二人組である。
「いらっしゃいませ」
「あ~何をもらおうかな。おすすめは?」
「当店はバーボンを主に取り揃えておりまして、中でもブラントン、ブッカーズ辺りがおすすめですね」
「じゃ、俺はブラントン」「俺はもう一つのほうで」
「かしこましました。飲まれ方はいかがなさいますか?ストレート?ロック?」
「水割で」「あ、俺はソーダで割ってくれるかな」
「かしこまりました」
もったいない、、、と思うも、客の希望であれば致し方ない。ワンショット1800円の高い酒を売りつけた私も悪い、、、。
「あの~すいません。BGMもっと明るい曲ないですか?AKBとか」
《アッカンべーだ。帰ってけ、クソがきっ!》と心の中では叫んだものの、せめてもう一杯飲ませてから、怒ることにしよう、、、。
「大変申し訳ございません。ア(A)ッカ(K)ンべ(B)、いや、AKBは用意しておりません」
「帰るかぁ~つまらん店」「帰ろ、帰ろ」
「ありがとうございます。4600円でございます」
「高っけぇ店!」
お客様は「神」ですが、“Gospel”は捧げたくない、、、