紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” お~キャロル2

 
 キャロル・キングが1967年、アレサ・フランクリンに提供した楽曲で、“The Kennedy Center Honors”でのパフォーマンスをDVDに入れた。



Aretha Franklin (You Make Me Feel Like) A Natural Woman - Kennedy Center Honors 2015


 ドアベルが鳴り来店を知らせると新規の女性客で、カウンターの中央の席に着いた。


「いらっしゃいませ。お二人様でよろしかったでしょうか」


「はい。私、優子に教えてもらってお邪魔させて頂きました」


「優子様?」


「ラウンジでピアノ弾いてる娘で、私は短大の同級生なんです。『いいお店見つけたから行っておいで』って言われて。優子も後から来るって言ってました」


「ありがとうございます。よくいらして頂いてますよ、彼女」


「えっと~、ジンをロックで頂きたいんですけど大丈夫ですか?」


「もちろん、ジンは何かご指定ございます?」


「ボンベイ・サファイアあるんですね、じゃ、それで」


「お客様はいかがなさいますか?」


「私は、そうね~ジャック・ダニエルをロックで」


「かしこまりました。しばらくお待ちください。おつまみよろしければメニュー置いておきますのでご覧になってください」


 ボンベイ・サファイアのブルーのボトルが、カウンターを照らす明かりに反射して美しく輝いている。氷を落としたオールド・ファッションド・グラスを並べ、注いでいく。ジャックはサトウカエデの香りを微かに漂わせている。チェイサーとチャームを添えてお出しした。


「このビデオは何かの賞なんですか?」


「そうですね、アメリカの芸術家に贈られる賞で、この年は今かかってる曲の作曲者、キャロル・キングが受賞しました。ほら、今、写った女性の方」


 映画、音楽界からの選出者が多く、アメリカ文化を象徴している。日本の芸能界とは大きく異なり、この差は永遠に埋まることはないであろう。金が儲かれば何でもありの日本、メディアに踊らされる消費者、世界の笑いものかもしれない。


 アイドル達が幅を利かす日本の音楽、映画界は好き、嫌いの問題では片付けることはとても出来ない。日本にも多くの素晴らしい音楽家、俳優はいて、真剣に歌に演技に取り組む方に失礼極まりないことだ。歌、演技などせず、テレビのバラエティ番組で遊んでいればいい。また、彼女(彼)らも、欲深い金儲けだけに利用され、使い捨てにされる犠牲者である。


「ですよね、私は優子みたいに音楽の道に進まなかったんですけど、才能ある人達が世に出ず埋もれてる図式ってあり得ないですよね。テレビを中心に動いていく芸能界に先もないし、文化など成すわけないですよ」


「おっしゃる通りですね、私もテレビの責任は重いと思いますよ。映画にしてもテレビ局が製作に携わるようになってから、すべてが軽い作品になってしまってますね。後世に残るような名作は生まれませんよ。それが日本って国ですね」


 ドアベルが鳴りピアニストの来店を知らせた。
                                       続く

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