紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

出来ることならば初話からお読み頂ければ幸いです。

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 連載中

「家族」 新たな生活 3

 
 ランチが始まると同時に店は満席となり、待ちの客も出始めピークを迎える。キッチンは目の回る忙しさだが、その慌しさがホールに伝わることはなく、ゆったりとした食事が楽しめる。


 コースに仕立てられたランチは洗い物が半端なく、テーブルの片付けと洗い物をしている綾香の顔からは笑顔は見られず、英子が気にして声を掛けている。


 「綾香ちゃん、無理はしたらダメよ。人が出来ることなんて、たかがしれてる事。どんなに忙しくたって2時には終わっちゃうんだから、慌てないでゆっくりね。自分が辛かったらお客様を喜ばすなんて出来ないよ」


と優しく諭すように話しかけるが、綾香の目の前にはお皿が山のように積まれており、笑顔を取り戻す余裕はないようだ。


 調理の手が空けばすぐに貴子も洗い場に入り、


 「洗い場の仕事って大切なのよ。お皿が汚れたままだったら、また洗い場に戻す仕事が増えるし、気が付かずに提供してしまえば、お客様を不快にさせ、クレームを受け、余計に時間を取られてしまうしね。お皿の裏に油が残っててホールの人がお皿滑らせたらそれこそもう大変。だから慌てないで、一枚一枚丁寧に洗っていこうね」


と声をかけ、綾香に合わせてゆっくりと洗い物をしている。綾香は洗い場の大切さがわかり、ピカピカに輝く皿を見て次第に笑顔を取り戻していくのだ。そして楽しいと思うことでリズムが出来上がり、スピードも自然と増して行く。


 店内は食後のコーヒーを楽しむ客が残るだけで、ホールのスタッフもキッチンの片付けに入り、そして貴子は賄いの準備だ。数種のスパイスを香りよく炒め、キッチン内はなんとも言えぬ香ばしい香りに包まれる。スタッフもみな笑顔で香りを楽しみ、綾香もいっぱいに吸い込み楽しんでいる。最後の客が会計を済ませると、スタッフがバターライスを人数分よそい、貴子が出来たてのカレーをまわしかける。


 お店の奥のテーブルに運ばれ、みなで揃っての昼食だ。店内は美味しい賄を頂き、幸せいっぱいの笑顔に、大きな笑い声が響き渡っている。
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