紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

「家族」 挑戦 2

 
 敏也への撮影依頼は、本社を写真館からカフェに移しており、会社役員である英子の元に入る。


 今回舞い込んできた依頼は、小説を元にカット写真を載せ、週刊誌紙上で連載をしたいとのことだ。有名小説家とのコラボでは、敏也はまず承諾しないであろうが、無名小説家の処女作品であり、小説の内容次第で受ける可能性は高い。英子はその旨を出版社に伝え、敏也の帰りを待っている。


 撮影中、他の案件をイメージさせることは、創作中の作品に影響が出る可能性もあり、敏也に連絡を入れ、新たな依頼の打診をすることはしない。英子らしい配慮である。


 英子は、撮影から戻った敏也に、あらかじめ取り寄せておいた小説の原稿のコピーを手渡し、依頼内容を説明している。流し読みではあるが内容に不満はなく、ただ撮影に入れる時期と小説に書かれている時期が異なるため、その修正が可能であれば受けると言う。


 小説家として、写真に合わせて内容を書き換えることは屈辱なのであろうが、小説の内容に合わせて日程を組むのは不可能に近い。


 出版社を通じて作者に打診したところ快く承諾が得られ、また起用のモデルは任せるが、必要であれば手配をすると言う。


 今回の撮影は危険はなく済みそうで、敏也は英子に


 「今回頂いた話だけど、英子さんモデルしないか。そして綾香も同行させたい。撮影現場を見せてあげたいし、いい勉強になると思うけど」


と話し、小説の主人公に年齢の近い英子に打診をしている。英子の心の中では、


「二度とモデルは、、、」


との気持ちがあるが、生涯を通じ敏也に仕えることを決めている英子は、


「喜んで、そのオファーお受け致します」


と承諾をしていた。


 翌日、英子から綾香に


「ねえ、綾香。先生がね、今度、撮影に3人で行かないか、って。で、綾香は先生のアシスタントね。きっと大変よ~」


「やったぁー!。でもアシスタントってどうすればいいの」


 綾香は喜びを身体いっぱいに表現し、飛び跳ねて万歳をしているが、多少の不安もあるようだ。


 綾香は、かつて敏也のアシスタントとして腕を振るった英子から、また今もアシスタントとして同行機会の多い佐々木から指導をうけることで、大忙しの日々だ。もっとも敏也は、アシスタントをそれほど必要とはしていない。
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