紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

「家族」 挑戦 1


 自転車を手にした綾香は、多くのことで前向きに捉えることが出来るようになってきた。


 朝は英子と一緒に10km程走り、業務でも進んで写真館まで自転車を走らせる。行動範囲が広がり楽しくて仕方ない様子だ。また、交通量の少ない安全な道を選ぶことや、絶えず周囲の車、人にも注意を向け、相手の動きを見て自分がどう動くかなど、考え行動することが、仕事によい結果を招いているようだ。以前は、ふと陰りのある表情を浮かべることもあったが、今はもう見せることはない。


 自転車に乗ることで、今まで気が付かなかった辺りの景観も新鮮に映し出される。公園を見つけ自転車を止め、もう間もなく訪れるであろう紅葉、雪化粧をした風景、満開の桜をイメージする。そんな他愛も無いことも楽しみなのだ。公園で遊ぶ親子の姿を見ても、もう寂しいとか、羨む気持ちに戻ることはない。


 写真館に頻繁に出入りし、以前から興味のある写真はもちろん、写しだすカメラにも興味を持ち始めた。店頭でカメラを覗き込んだり、佐々木の話にじっと耳を傾けることも多い。


 「お給料貯まったら、カメラ買おうかな」


と佐々木に話すこともあり、カタログを持ち帰り眺めている姿を、英子も何度か見かけている。


 綾香には毎月食費と寮費が引かれ、手取りの金額としては数万円の金額であるが、給与が支給されている。また、生活に必要なものは英子が買い与えているため、自分のお金を使うことは、好きな本を買うことぐらいである。銀行口座にはけっこうな額が貯まり、普及品のデジタル一眼レフを買うぐらいは優に超えているはずだ。


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