紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” お~キャロル3


「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」


「こんばんは。今日はえ~っと、どうしよう、ターキーもらおうかな、ロックで」


「かしこまりました。しばらくお待ちください」


 久し振りの顔合わせに女性3人の会話が弾んでいいるようで、微笑ましい。BGMを流して聴けるようにヴォーカル曲は外そう。クルセイダーズのライブ盤をターンテーブルに乗せた。“So Far Away”




The Crusaders - So Far Away - Live Recording


 低音2管のアンサンブルに、ピアノ、ギターが絡み合う。中盤に聞かせるロングトーンは感動ものだ。


 キャロル・キングの歌うバージョンには邦題が「去り行く恋人」と付けられた。歌詞の内容からかけ離れたものではないが、邦題の存在自体に多くの疑問がある。難しく考える必要などなく、単に訳してくれればそれで良いはずだ。曲のタイトルには作者の思いが込められている。作者の意図を踏みにじる行為であるし、英語に関心を持つ者、興味を示し学んでみようと思う者から見れば邪魔以外、何物でもない。


 私の好きな映画に“An Officer and a Gentleman”があるが、邦題に「愛と青春の旅立ち」と付いている。作者の意図することは伝わるのであろうか、疑問だ。ただの「恋愛ドラマ」に仕立て上げたかったのであろうか、、、


 多くのことで曖昧でいい加減なことが許される日本だが、欧米諸国は自国、築き上げてきた文化に誇りを持つ。愛国心もなく、自国の文化さえ大切にしない国が、他国文化に土足で入る込むことなど許されるわけがない。


 女性達が聞き込まないで済むようヴォーカル曲を外したが、ピアニストの優子が話しかけてきた。やはり音楽がよほど好きなのであろう。


「メロディアスであり強烈なファンクも感じますね、この曲」


「この曲もさきほどからかけているキャロル・キングの曲ですよ」


「え?ジャズ・バンドも彼女の曲、演奏してたんですか?」


「もう、あらゆるジャンルのアーチストから愛されているんでしょう。広く浅くでは決してないですよね」


「愛されるかぁ~、日本人は愛の表現とか下手ですよね」


「下手なのでしょうかね。持っていないから表せないのではないでしょうか?愛とか人を思いやる気持ちはどこの国よりも低いと思いますよ。そして利己主義、個人主義が一番強いですよ、日本は。そう思っていないのは、日本人だけじゃないのでしょうか」


 表現が下手なのではない。持ち合わせていないものは表現できない、ただ、それだけのことだ。日本には弱者を優先、保護する気持ちも先進国中最低レベルであろう。愛することも出来なければ、愛されることも知らないのだから仕方ない。

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