紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

「家族」 敏也 1


 敏也は京都の大学に進み、この頃からクラブ回りを始め、プロのミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせた。中学からギターを始めていたが、ジャズクラブや他のプレーヤーから圧倒的に重宝されるベースをプレイしている。


 ギターから転向したこともあり、ベーッシックなラインを取るだけではなく、メロディアスなラインを好み、京都市内や地元名古屋のミュージシャンからは一目置かれる存在だ。もちろん敏也のベーススタイルを嫌うミュージシャンも多い。


 京都を中心に活動するテナーサックス奏者に、東京のクラブ出演の打診が来ている。敏也のベースを気に入り、よく仕事をくれる男だ。


 誘いを受け、敏也は嬉しく思ったが、これ以上、学業を疎かにすれば卒業はまず無理だ。ただ、自分が目指すものは卒業することで得られることでもなく、近道になることもない。


 数日後、東京に出て二人はクラブにオーナーを訪ねた。店はアーチストを招いたり、興行の会場を提供するライブ・ハウスではなく、出演者が店と契約してショー的なライブを行っている。


「ベースは決まってるんだな、了解。必要ならメンバー世話するから言ってよ。あぶれたやつ、いくらでもいるから。出来るやつばっかりだから、スタンダード演るならリハもいらん」


 元々が市場の狭いジャンルであり、演奏者の競争も激しいようだ。


「ロックスターは一晩で10万ドルの金を手にするが、ジャズの帝王マイルスは500ドルで演奏する」


 敏也は以前に読んだ本の一行を思い出していた。


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