紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

「家族」 対面 2


 翌日の朝、英子と敏也は自転車で出かけ、綾香は帰りを待ち敏也の写真集を何度も見返している。


 敏也の自転車歴は長く、撮影で自然と触れ合ううちに環境問題にも興味が出て、自ずと車の利用が減り自転車を楽しんでいる。自転車の活用は決して環境に配慮するだけではなく、運動不足、ストレスの解消にも十分に役立っている。そして何より一番は、楽しいことだ。英子の自転車も敏也の影響を受けてのものである。



 綾香と敏也が写真館に着くと、すでに鍵が開けられ佐々木が準備に取り掛かっている。


 「おはようございます。店舗業務は休みますけど、現像は手伝わせて下さい。これは私の為なんです」


 佐々木の言葉に敏也はうなずくだけだが、感謝、写真家として大成して欲しい思いでいっぱいだ。


 その頃カフェでは英子と貴子が開店の準備に取り掛かっている。普段より多めにサンドウィッチを仕込み、写真館に届けるつもりだ。そしてもし綾香に居場所がなく、退屈しているようであれば連れ戻すことも考えている。


 写真館での作業は、敏也が現像を、佐々木が上がったフィルムの選別、そして店舗スタッフが交代でパソコンに取り込む段取りが取られ、綾香はもっぱら見学が与えられた仕事のようだ。今回の撮影は、数社の依頼を併せて行っており、選別が確実に行われれば後の業務が楽である。大方どの写真をどの出版社に充てるかを把握している佐々木のサポートはとても助かる。


 店舗スタッフがフィルムをパソコンに落とし込む作業を綾香はじっと眺め、モニターに写し出される写真にどんどん吸い込まれていく。思わず声を上げてしまうこともしばしばだ。そしてスタッフに


 「綾香ちゃんもやってみる」


と声をかけられ、スキャンをしファイルに収める作業を教わり、手際よくこなしている。スタッフが交代のために上がってきても綾香はパソコンの前から離れようとしない。仕事を取り上げられた店舗スタッフも綾香を優しく見守っている。


 一階の店舗に英子がサンドウィッチを抱えやって来た。


 「みんなの分も作ったから、よかったら食べてね」


 「うわぁ~」


 そんなとき二階から綾香の喚き声が聞こえた。


 首をかしげる英子にスタッフが、


 「聞いてくださいよ、あの声。綾香ちゃんに仕事取られちゃったんですよ。もうパソコンの前から離れようとしないんですから、まったく。先生の写真が見れるって、楽しみに仕事でてきたのに」


 スタッフに微笑を返し二階に上がった英子は、じっと綾香を見つめ安堵の様子だ。退屈どころか自分の居場所をしっかり確保して貢献もしている。そっと写真館を後に、ランチのピークを迎えるカフェへと戻って行った。
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