紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

「家族」 憂鬱な日 2


 敏也の合図にカーテンが開けられ、その瞬間にクラッカーが鳴り響いた。


 驚いた綾香は奇声を発しのけぞっている。


 「綾香、お誕生日おめでとう」


と英子の大きな声が響いた。その後に続きスタッフや常連客から繰り返しおめでとうと声がかかり、拍手で迎えられ、敏也のエスコートで席の中央へ進む。誕生日など祝ってもらった記憶はなく、学校で友人の誕生日の話を聞くことも、自分の誕生日の話を聞かれることも嫌で、自身の誕生日が最も憂鬱な日であった。綾香の表情は強張り、ことを理解できるまで少し時間はかかったが、


 「あり、、、うござ、、、」


と言葉にならない言葉をやっとの思いで発し、目が潤んでいる。


 席の後ろには英子と同じブランドの自転車が飾られ、テーブルには大きな花かごと料理が並べられている。


 英子から、


 「自転車は先生からで、お花は写真館のスタッフからお誕生日のお祝いね」


 声を詰まらせながらも、礼を告げ敏也の顔を見ると、優しく微笑み、うなずいている。


 そして常連客から自転車用のヘルメット、カフェのスタッフからはザック、最後に英子から自転車用のウェアーが手渡され、綾香は涙を止めることができなかった。


 敏也は、綾香が自転車を欲しがってると英子から話を聞いており、この日が早く来ないかと待ちわびていた。遠方から戻らないといけないことなど何も苦ではなく、敏也自身がとても楽しみにしていたことだ。


 こうして綾香16歳の誕生日は過ぎ、敏也は再び撮影地に戻って行った。



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