紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

Primo piatto 自然の猛威

  朝、汽笛の音で目が覚め窓の外を見ると、綺麗な海が広がりフェリーが入港しようとしている。何処から来たのであろうか、また、ここから何処へむかうのだろうか。船旅もいいかもしれないと感じる。


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 朝食はビュッフェではなく朝定食である。先ずはお味噌汁を啜るのだが、ものすごく甘い。なにか調味料を間違えたのかと思わせるほどの甘さなのだ。出しの違い、味噌の違いでは考えられない、今まで体験したことのない味噌汁の甘さにはとても驚いてしまったが、きっとこの甘さが、この地の味なのであろう。美味しい不味い、合う合わないではなく、この地の味を体感できたことは私にとってとても有意義なことだ。
 
 朝食を済ませ噴火のあった山を目指し自転車を走らせる。いきなり長い坂が続き昨夜の酒量を反省するが、綺麗な女性を前に酒がすすんでしまうことは致し方ないことで、自然の摂理に合ったこと、男って、ホント馬鹿。


 ロード・バイクとは思えないフラフラ状態で坂を上り切ると、一気に視界が開け右手に緑に覆われた山が連なり、左手には海が見える。平坦になった道を気持ちよく進むと一本の川に差し掛かった。
 川にはほとんど水がないものの川幅がとても広く、どことなく異様だ。橋を渡ると木々に覆われた山は姿を消し、遥か奥に森林限界を超える高さではないのに、まったく緑のない岩肌をむき出しにした山が姿を現した。火砕流で焼き払われた痕跡が映し出される。


 川伝いに進路を取り進入禁止とある場所まで一気に上り詰め、山を見上げただただ呆然とするだけだ。


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 ここで一枚写真を撮り終えたところであえなく電池切れで、昨夜充電し忘れたことが悔やまれる。


 山を下り、途中の資料館に入って充電をお願いし、生々しい火砕流の展示写真などをみていると、館長らしき人物が山頂に向け望遠鏡を用意してくれた。覗いてみると噴煙が確認でき、溶岩で出来上がった山が鮮明に映し出される。
 館長の話を聞くと、この辺り一帯も焼き払われてしまったそうで、近くに小学校がそのままの状態で保存されている。鉄筋コンクリートの外壁だけが原型を留め、校舎の中は凄まじい状況だ。


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 この小学校には隣接して国土交通省の資料館があり、多くの展示がされこの山の地形の変化を切り取っている。
 大自然の猛威をまざまざと見せ付けられ、人間などはただその中で生かされているに過ぎなく、小さな存在に思えてしまう。人から見れば大災害なのであろうが、自然から見れば何億年と続いている地形の変化の一部に過ぎないのであろう。


 この山の噴火で多くの報道関係者が尊い命を奪われた。ご冥福を祈るばかりだ。


 海の見えるところまで来ると、朝に思い描いていたことが無性に気になりだした。行き先なんて何処でもよく、フェリーに乗りたいだけなのかも知れない。港に着き、乗船券と自転車の乗り入れの料金を払い乗船だ。


 船内は多くの人で賑わい、観光バスも何台か入っている。韓国の女子高の修学旅行であろうか、ハングル文字の名札を付けた若い女の子でいっぱいでとてもタイミングの良い船に乗れたのだ。男子校の修学旅行であれば、楽しいはずの船旅もきっと、いや考えるのはよしておこう。


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 海面に軌跡を残し、船の周りにはカモメが飛び交い、遠くに先ほどまでいた山も見える。綺麗な女子高生もいて見事な景観を作り出している。


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