紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

出来ることならば初話からお読み頂ければ幸いです。

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 連載中

Primo piatto 駅長の仕事

 
 どこに向かうか考えながら自転車を走らせると、20年もの昔、噴火で大きな災害を出した山が頭に浮かんだ。報道で見た火砕流は未だに目に焼きついている。


 国道を走った後、きっとこっちに行けばと安易な気持ちで山に入り、道がくねり方角が定まらない。再度国道に出て現在地の確認をしようと店を探すが、こんなときはコンビニすら出てこないのだ。戻るか悩んで自転車を走らせると、一軒の中華料理店が目に入り、立ち寄ることにした。


 大阪王将で、この地で大阪もなと思いもしたが、やり過ごすことはお腹が許してはくれなかったのだ。昨日も食べた覚えのある餃子が私を呼んでいる。


 「いらっしゃいませ」


声がした方を見ると、40手前と思われるなんとも美形な店員さんだ。餃子ではなくきっとこの美女が私を呼んでいたのだ。
 ランチセットを頼み、現在地を確認しようと発した言葉は、多くの言葉を省略し、


 「ここどこですか」


と発していたのだ。丁寧に説明をしてくれたのだが、


 「この人、変かもしれない、、、」


と思われた可能性は非常に高い。余計なおしゃべりは誤解を招く恐れもあり、出されたから揚げ餃子にラーメンライスを楽しむ他はなかったのだ。欲しい情報も聞けずに失敗。


 店を出て、来た道を少し戻り進路を東に向けると、前方には山がそびえ立っている。しばらく走り麓に着いても、これしきの山は問題なく超えられると、唐揚げ餃子は私に力を与えてくれ、今回の旅で初めてのヒルクライムを一気に登り切ったのだ。
 しかし、峠を越える道が見つからず、下ることが出来ないのだ。仕方なく登った道を下り道を探すも見つからず、JR駅に立ち寄った。
 周辺地図を確認するも峠道の記載はなく、再度あの山を登るにはもう一人前の唐揚げ餃子が必要であり、自転車を袋詰めにした。


 改札は二階にあり、路線図を確認しながら見ていると、窓口にはマスクをしているが、20代半ばと思われる美形女性駅員が座っている。
 私はいま正にこの山を超えるには、どこまでの乗車券が必要なのか、また時間も押しており、どこまで行けば宿があるのかも悩んでいる。大きな態度を取るつもりはないが、客であり困っている客の手助けをするのは彼女にとっては職務であるはずだ。声をかけない理由はどこにもない。仮に座っていた駅員が男性でも、私はたぶん、いやきっと、いや絶対に同じ行動をしていたと思う。


 素敵な駅員さんは、自転車旅に興味を示したのか、外に出てきて詳しく説明をしてくれ、目指す山の所在地などの情報も得ることもできた。必要な要件は数分で終わってしまったが、自転車を覗き込んだり多くの質問を私にしてくるのだ。列車が来るまでの約40分ほどの時間を私の話し相手になってくれたのである。
 そしてカメラを渡し写真をお願いすると、ではご一緒に、となんとシャッター係りに駅長を呼んできたのである。そして最後に旅に使って下さいとタオルまで頂いたのだ。撮影のときにもマスクを外さなかった、明るく気さくな謎の女性駅員さんに感謝である。


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