紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” 愛歌1 


 看板の灯を入れに外に出ると、暗くなった街は暖かだった昼間の陽気が嘘のように冷え込み、街行く者はコートの襟を立て足早に家路を急いでいる。そんな中、ふらり、ふらりと歩く一人の女性に声を掛けられた。


「お店、もうやってますか?」


「はい、大丈夫ですよ、これから開けますので。どうぞお入りください」


 扉を開け招き入れると、女性はBGMのない店内をぐるりと見回し、カウンター中央に腰を降ろした。BGMは静かな曲が良いであろう。



You Are Everything - Diana Ross & Marvin Gaye


「なにか温かいお酒って出来ますか?」


「はい、ご用意できますよ。コーヒーもブランデーも大丈夫でしたか?」


「はい、どちらも」


「ではお作り致しますね、少々お待ちください」


 濃い目のコーヒーを一杯淹れ、生クリームをホイップした。ホットグラスに砂糖を一杯入れ、淹れたてのコーヒーを注ぎ、マーテルVSOPを30mℓ加え軽くステアーし、ホイップした生クリームをフロートする。


「ロイヤル・コーヒーでございます。温まりますよ」


「ありがとう、頂きます。素敵な曲ね」


 女性はグラスで手を温めながら、思いつめるように曲を聞き入っている。余計な話は避け、静かに流れる時間に身を任せてもらおう。


「ついさっきね、別れた旦那を見かけたような気がして、思わず追いかけてしまったの。そこの角まで来て結局人違いだったんですけどね」


「そうでしたか・・・・・まだ、その方のこと、愛してらっしゃるんですね」


「どうなんでしょね・・・・・私から別れるって告げたのに、馬鹿よね、ほんと」


「この曲、別れた恋人同士がお互いを思い合ってる歌なんですよ。あなたが、君がすべてなんだって歌っています」


「そんな曲なんだ、、、どんな理由で別れたのかしらね」


「さあ、どうなんでしょうか。歌詞には出てきませんので、聞かれる方が思いを曲になぞらしてもよろしいのではないでしょうか」


「あのときはどうしても彼を許せなかった、、、、でも、思い出すのは楽しかったときのことだけ。今は、どうしたいのか、自分でもわからない」


「なにも慌てることないですよ」


「一人で寒い冬を迎えるのは、、、辛い」
                                      続く


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