紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” 映画1 

 最近、劇場で映画を観る事がなく、何年も映画館に行った記憶がない。以前は洋画、邦画を問わず、よく劇場に足を運んだものだ。大きなスクリーンに映し出される映像と音は、テレビ画面で観る映画と比べることなど出来ない。映画の楽しみ方は多様化し、何をどう選ぼうが個人の自由であるが、映画は劇場で観て相応の価値がある気もする、、、



Elvis Costello 'She'


 BGMはイギリス映画でイギリスのシンガーが主題曲を歌い、しかもオリジナルはフランス人で店のコンセプトはまったく関係がない、、、ただ、ジュリアが好きなだけ。あっ、日本人にも「あっち系」にジュリアちゃんがいまして、、、ちょっと好き。う~最高、ジュリア~~~~~、、、馬鹿っ



 カラン、カランと呼び鈴が鳴り客の来店を知らせると、明日香が一人で顔を出した。カウンター中央に腰を降ろし、カクテルを作って欲しいと頼まれたが、心なしか切ない表情を浮かべている。



 私はカクテルグラスの淵にライムを湿らせ、砂糖でスノースタイルを作り、ピンで刺したミントチェリーを添えた。氷を落としたシェーカーにウォッカを40mℓ、ホワイトキュラソーを20mℓ入れ、生ライムを搾り入れシェークしグラスに注いだ。



「お待たせ致しました。雪国です。鮮やかに緑に染まったチェリーは春を待つイメージです」



「ありがとう。何かね、切ない感じ、、、あっ、映画観てきたんですよ」



「それは素晴らしい。十分に楽しめましたか?」



「ええ、ストーリーも役者さんも素晴らしかったですよ。主演の佐藤健も大好きな俳優さんですしね。ただ、う~ん、何かしっくりこないんですよね~いい映画だったと思うんですけど」



「おっしゃりたいこと、なんとなくわかる気がしますね。テレビドラマを大きなスクリーンで観てる感じじゃないですか?映画のなんて言うか重厚さがなくって全体にさらっとしていて、言葉が悪いですけど軽いんじゃないですか」



「そうそう、まるでテレビドラマ。今、映画館でしかやってないから映画館行ったけど、レンタル始まったらそれで十分かな~って。敢えて映画館で観る価値は時間的なことでしかないんすかね」



「私も映画はほんと疎遠になってしまいましたね。もう5年以上も映画は観ていないですよ」



「最後に観た映画はどんな映画だったんです?」



「『あなたへ』って映画なんですけど、主演した高倉健の大ファンでしてね、映画は必ず観に行ってたんですよ。そうそう、この方が出演したアメリカ映画で名古屋ロケがあったんですけど、エキストラ応募したら当たって、生の高倉健を見ることも出来ましたね。よく探せば、私も映画に映っていたかもしれません」



「そんな探さないといけないぐらいなの?」



「野球場のロケで観客のエキストラですからね。座っていた位置は確かに映像に流れたんですけど、顕微鏡使わないと探せませんよ」



「私は健(たける)さんのファンですけど、父も高倉健さん大好きですよ。『あなたへ』ってもしかしたら最後の映画、、、」



「そうなってしまいましたね。名脇役でもあった大滝秀治の遺作にもなってしまった映画です」



「映画はどうでした?」



「そうですね、私は邦画にはとっくに見切りを付けていて、この映画に関しても全く期待していませんでしたから。ただただ、健さん観たいだけですから、それだけで満足ですよ」



「期待していないって、、、」



                                      続く



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