紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” 変装1

 毎年この時期になると、インフルエンザの流行の兆しが見え、街にはワクチン接種を啓蒙するポスターが至るところに掲示される。行き交う人のマスク姿もよく見かける。


 マスクをする理由は、感染を防ぐ為なのであろうか?それとも、人に感染させないように努めているのであろうか?中には顔を隠すためにしている人もいるであろう、きっと。防寒もあるかもしれない、たぶん。


 私も冬、自転車に乗るとき、防寒にスノーボード用のマスクを着用するが、そのままコンビニに入れば、きっと店員はカラーボールに視線を向けているであろう。人相の悪さは隠せるが、自分で見ても不気味だ。マスクはジム・キャリーがよく似合う(意味不明)。実は私、「マスク」で女優デビューしたキャメロン・ディアスの大ファンでして、う~ん、キュート&セクシー。どうでもいい話だ。そして「マスク」に出演していたワンちゃんは宮崎にいると噂が広まっている。


「冬はメイクに手を抜いても、マスクしてればいいから助かる」


 逃げたかみさんの言葉を思い出す。マスクをする女性の多くは、ここに理由があるのかもしれない、、、



ALOHA2008 街角トワイライト


 変装と言えば、すぐさま姿、形を変えるインフルエンザ・ウィルスがいて、毎年必ずやってくる。流行ではなく、もはや定番であろう。クリスマスにチキンを食べるようなものだ。この流行に便乗して大きく稼ぎを上げる連中もいて、国が応援もしている。こいつと好んで関わりを持ちたいと思う人はいないであろう。こいつとの関わりを避けようと人は医療機関を訪れる。


 カラン、カランとドアの呼び鈴が鳴り客の来店だ。誰だろうか、、、


「いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ」


「私ですよ。ハーパーのロックください」


 客の女がマスクを外しながらオーダーをすると、いつも来てくれるピアニストであった。


「変装のおつもりですか?はい、お待たせ致しました」


「もう、からかわないで下さいよ、風邪引きさんの定番アイテム」


「マスクされる方、多いですよね。日本だけらしいですよ」


「へえ、そうなんだ。ねえ、マスター、今年も凄いんだってね、インフルエンザ」


「もう、毎年ですからね、掛からないようにしっかり予防して、免疫落とさないようにしないとだめですね」


「どうしよっかなぁ~予防接種行ってこようかな、やっぱり」


                                     続く

“Soul bar-IORI” お笑い系R&B

 店を開けたものの、ノーゲストのまま4時間が過ぎようとしている。こんなときは映画でも観るのがいい。それも底抜けに楽しい映画、笑うしかないのだ。レコードを外し、DVDを入れ、モニターのスイッチを入れていた。 選んだDVDは、1980年公開(日本では翌年の公開)の“The Blues Brothers”だ。



Rawhide - The Blues Brothers (5/9) Movie CLIP (1980) HD


 主人公の義兄弟がハチャメチャな珍道中を繰り広げ、財政難から運営の危機に迫った、少年期を過ごした孤児院を助ける物語で、ストーリーの楽しさはもちろん、繰り広げられるカーチェイスも見応えのある映画だ。
  また、牧師役にジェームス・ブラウン、カフェの女主人にアレサ・フランクリン、楽器屋の主人にレイ・チャールズなど、「役者」として登場するミュージシャンの顔ぶれもすごい。実際に映画に登場するバンドは“The Blues Brothers Band”として音楽活動も行っており、多くのレコードも残している。


(続編で「ブルース・ブラザーズ2000」も多彩なゲストで製作されている。こちらは、とてもキュートなイラストレーターさんのブログに紹介されてますので、ぜひご参照を)


 映画を観ながらお腹を抱えて笑っていると、カロン、カランと呼び鈴が来客を知らせ、ラウンジのピアニストが入ってきた。


「いらっしゃいませ」
  「もう、楽しそうな笑い声がドア開けた瞬間に聞こえましたよ。映画ですか?
「あ、失礼致しました。今、映画止めて音楽かけますね」
  「いえいえ、そのままでいいですよ、楽しそうな映画だし」
「そうですか。お飲み物はいかがなさいますか?」
  「ええ、ハーパーのロックと、お水を先に頂けますか?」
「はい、かしこまりました。でも、またサプリじゃないでしょうね」
  「いえいえ、もうサプリは買いませんよ。今日は風邪薬」
「あれま風邪ですか、お大事に。はい、お待たせ致しました」
  「ありがとう。ひきはじめが肝心だからお薬飲んで、早く治さないとね」
「また、大きなお節介ですけど、、、風邪薬飲むと長引きますよ」
  「え?何言ってるんですか、まったくぅ~。早く治したいから飲むんですよ!」


 風邪に効く薬など、この世には存在しない。薬は治癒目的ではなく、症状を抑えるために用いる物だ。風邪で起こる症状はすべて身体の防御反応で、いち早く体外にウィルスを排出する為に起こる症状である。薬で症状を止めてしまえば、治そうと必死の身体にとっては邪魔されてる以外何物でもない。仕方なく症状を抑えなければならないとき意外は、薬の服用は避けたほうが無難であろう。


 いち早く風邪を治すには安静以外はない。また、ウィルスは低温を好み増殖するので、身体を冷やさないことも大切だ。熱が出れば辛いが、ウィルスの増殖を抑えようと身体は熱をだす。ウィルス撃退に必要なエネルギーが、動くことによって消耗されないよう、身体は辛くなる。動くなと言う脳からの指令だ。


 自然の摂理から大きく外れた薬の服用は、副作用を伴う。確かなことなのかわからないが、笑うことで免疫力が上がるとも言われる。薬を飲むよりはましで、笑うことでの副作用は心配ない。笑いすぎてシワが増えることも決してないと思う。

“Soul bar-IORI” 壁

 “Soul”、“R&B”界において巨大な勢力を持った“Motown”が、ポピュラー志向に傾倒したのに対し、サザン・ソウルとも呼ばれ、アメリカ南部の泥臭さを前面に出したレーベルも存在していた。テネシー州メンフィスに本拠地を置く、“Stax”である。



Otis Redding Sings Respect


 スタックスレーベルのアーチストのバックバンドを勤めた“Booker T.& the MG's”は、黒人と白人の混成で、人種の隔たりなく壁を取り除き活動をしたバンドだ。このバンドのメンバーのギターリストとベーシストが、映画「ブルース・ブラザーズ」に出演しており、演奏する姿をご覧になった方も多いのではないであろうか。またの機会にかけてみたいと思う。


 ドアの呼び鈴が来店を知らせると、スーツ姿の男と昨日同様の水商売らしき女のカップルだ。繁華街が近く、同伴出勤も多いのであろう。


「いらっしゃいませ、お二人様ですか?」


「君、シャンパンはあるのか?彼女の誕生日を祝いたい」


「はい、シャンパンは一種のみですが、モエのアンペリアル、ブリュットを用意しております。少々辛口ですね」


「どこのシャンパンなんだ?」


「もちろん、フランス、シャンパーニュでございます」


 フランス、シャンパーニュ産以外、「シャンパン」があるのだろうか、、、あり得ない。フランス産でもブルゴーニュの「クレマン・ド・ブルゴーニュ」、フランス以外ではイタリアの「スプマンテ」等のスパークリング・ワインがあるが、シャンパンは選定基準の厳しさと熟成期間の長さにおいて突出しているスパークリング・ワインである。


 ただ、この男の勘違いに非はないであろう。私が子供の頃、クリスマスに飲んだ甘いジュースまでをもシャンパンと呼んだほど、曖昧に他国の文化を取り入れてきた日本だ。しかも、過去には「カリフォルニアシャンパン」が実際に存在した事実もある。何をどう扱おうが勝手なのであろうが、ブドウの品種、製法において厳格な基準の下に製造している「シャンパン」職人から見れば、きっと悲しいことであろう。


 国際社会の仲間入りをし、先進国を自負するのであれば、もう少し他国の文化を重んじてもよいのではないかと思う。行政や大資本の企業、教育の責任は重い。勝手に壁を取り除いてはよくないこともある。


 日本は金があるから、まだ、他国から相手もしてもらえるのだろうが、感覚はアジアの一小国に過ぎないのだ。