紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” 壁

 “Soul”、“R&B”界において巨大な勢力を持った“Motown”が、ポピュラー志向に傾倒したのに対し、サザン・ソウルとも呼ばれ、アメリカ南部の泥臭さを前面に出したレーベルも存在していた。テネシー州メンフィスに本拠地を置く、“Stax”である。



Otis Redding Sings Respect


 スタックスレーベルのアーチストのバックバンドを勤めた“Booker T.& the MG's”は、黒人と白人の混成で、人種の隔たりなく壁を取り除き活動をしたバンドだ。このバンドのメンバーのギターリストとベーシストが、映画「ブルース・ブラザーズ」に出演しており、演奏する姿をご覧になった方も多いのではないであろうか。またの機会にかけてみたいと思う。


 ドアの呼び鈴が来店を知らせると、スーツ姿の男と昨日同様の水商売らしき女のカップルだ。繁華街が近く、同伴出勤も多いのであろう。


「いらっしゃいませ、お二人様ですか?」


「君、シャンパンはあるのか?彼女の誕生日を祝いたい」


「はい、シャンパンは一種のみですが、モエのアンペリアル、ブリュットを用意しております。少々辛口ですね」


「どこのシャンパンなんだ?」


「もちろん、フランス、シャンパーニュでございます」


 フランス、シャンパーニュ産以外、「シャンパン」があるのだろうか、、、あり得ない。フランス産でもブルゴーニュの「クレマン・ド・ブルゴーニュ」、フランス以外ではイタリアの「スプマンテ」等のスパークリング・ワインがあるが、シャンパンは選定基準の厳しさと熟成期間の長さにおいて突出しているスパークリング・ワインである。


 ただ、この男の勘違いに非はないであろう。私が子供の頃、クリスマスに飲んだ甘いジュースまでをもシャンパンと呼んだほど、曖昧に他国の文化を取り入れてきた日本だ。しかも、過去には「カリフォルニアシャンパン」が実際に存在した事実もある。何をどう扱おうが勝手なのであろうが、ブドウの品種、製法において厳格な基準の下に製造している「シャンパン」職人から見れば、きっと悲しいことであろう。


 国際社会の仲間入りをし、先進国を自負するのであれば、もう少し他国の文化を重んじてもよいのではないかと思う。行政や大資本の企業、教育の責任は重い。勝手に壁を取り除いてはよくないこともある。


 日本は金があるから、まだ、他国から相手もしてもらえるのだろうが、感覚はアジアの一小国に過ぎないのだ。

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