紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

出来ることならば初話からお読み頂ければ幸いです。

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 連載中

Antipasto ハラハラ、ドキドキの体験

 列車はゆっくりと名古屋駅のホームに入る。自転車の固定を外して出入り口の前に立ち開口を待つと、折り返し亀山行きとなる列車を待ち、人が列を作っている。整然と並んだその姿に、日本人の行儀よさと右に習え的な嫌な感覚が交差する。

 扉が開き自転車を抱え降りようとすると、なんと我先にとダンプカーのごとく様相を化した中年女性が、私を押しのけ乗り込んでくる。その後も人が続き、ようやくひとりの女性が列車内への乗り込みをやめ、スペースを空けてくれ私は降りることが出来たのだ。日本人の行儀よさは、きっと見せかけだけのものなのだろう。
 しかし怖かった。自身の行動さえも美しく見せることを葬ってしまった女性は怖いのだ。


 駅にはなんと人の多いことなのだろうか。今日本が抱える問題で少子化があるが、専門的なことは理解しておらず、つたない文章もあって誤解を招く恐れもあるが、人、多いでしょ日本。人口密度だけ単純に見ればヨーロッパで日本を上回るのはオランダ、ベルギーの二カ国だけで、アメリカ合衆国を考えれば、人口は倍ほどだが国土は30倍だ。
 今の人口で形成されたしくみは、人口の減少で大きな弊害を招くことであろうが、これはまた別の話である。


 広々とした駅構内を、自転車で走れたらさぞ気持ちが良いだろうな。ずっしりと肩にのしかかる自転車の重みが、私にそう思わせたのであろう。


 JR東海ツアーズを探し、新幹線口に向かう途中に見つけることが出来た。窓口はいくつもあり、綺麗なお姉様やそうでないお姉様もいろいろで、どのお姉様に進路を取るか迷うところだが、それは許されず整理券を取ることになる。
 手を合わせ2番窓口にお願いと、祈り順番を待つがまだ来ない。順番が近づく度に、今2番が呼んだら私の目はないと、点灯するランプにハラハラドキドキだ。待ちに待って私の順番は次である。2番窓口では小汚いおっさんがいつまでも話していて席を立つ素振りもないのだ。用件が終わったら待っている人のこと考えて素早く席を立つのが思いやりであろう。
 3番窓口に私の持つ整理券の番号が表示され、新幹線と宿をセットにした切符が手配できるか確認を取ったのだが、ホテルに空きがなく残念ながら手に入れることが出来なかった。一軒一軒空きを確認して笑顔を絶やさず対応してくれとても満足である。丁寧な対応に感謝しつつも、いつまでも居座り続ける隣の男性に鋭い目線を向けていた私であった。
 このハラハラドキドキ体験は、無料で参加できるのでぜひお勧めしたい。


 名古屋駅構内には、多くの飲食店が軒を連ね競い合っている。中にはご当地ラーメンを一同に集めた街道なるものまであるのだ。しかし名古屋駅に来ればやはりホームのきしめんだ。アジサバ節と思われる出汁のきいたつゆで、モチモチ感も腰もない微妙な食感がたまらなく良い。調理も手早く、列車の待ち時間にも適している。

 名古屋は主だった産業は工業製品で、食に関する特産品もなく概ね既存食の変化形が多いのが特徴だ。このきしめんをはじめ、ひつまぶし、味噌カツ、あんかけスパ等も同じで、名古屋めしと呼ばれる品の多さも、こと特産品がない影響なのかもしれない。


 新幹線に乗るのはいつ以来なのだろうか。思い出そうとしてもなかなか思い出せない。過去に利用した主だった列車は私に多くの思い出を残してくれているが、新幹線はなぜか印象に残らないのだ。
 在来線からの乗り換えも円滑で、運行本数も多く私にとっては決して日常ではないのだけれど、あまり特殊なものではなくなってしまったのかもしれない。時間短縮や便利なものを求めると、何か大切なことを失ってしまう。


 早いことが良いことだけではなく、時間をたっぷりとかけて楽しむことも大切だ。20代の頃にお付合いしていた女性に、早すぎの役立たず、と蹴りを入れられたことを思い出す。




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