紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

出来ることならば初話からお読み頂ければ幸いです。

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 連載中

Dolce AKR47

 
 翌朝、何の感動もなくホテルを出て、城と、隣接する日本三名園とうたわれる、かつての大名庭園を目指し自転車を走らせた。


 加賀100万石と言われる金沢の兼六園、徳川の御三家である水戸の偕楽園、池田さん(当地藩主)もお金持ちだったのであろう。


 お城は太閤秀吉が築城した大阪城の天主を模索したことや、黒塗りであり白鷺城と呼ばれる姫路の城と対比されることが多いが、お城としての価値は私にはよくわからない。


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 お城と藩主の自己満足のお庭を後にして自転車を走らせると、焼き物で有名な地に辿り着いた。
 
 JRの駅ビルが、伝統産業会館として焼き物の展示販売を行っている。地域産業に根ざした駅ビルは、誇れるものであろう。何処に行っても同じような商業施設が入る駅ビルでは、あまり価値がないのだ。


 室町から安土桃山時代にかけて栄えた茶道と共に、多くの名品を世に送った窯である。江戸期に入り茶道が衰退し輝きを失せた時期もあると聞いたが、釉薬を使わない焼き物はより自然な仕上がりで、美のそして物の原点であるようにも感じる。時代の流行などと関係なく、多くの人に愛され続けているのであろう。近代の世の中に欠けている何かを、この焼き物は持っているのかもしれない。


 焼き物の街を離れ海岸に向かって自転車を走らせると、美しい景観が広がるも目の前には山がそびえ立っている。
 排気ガスが充満する長いトンネルを避け、海岸に向かったのだが峠越えの様子だ。なかなか楽には自転車旅をさせてはくれない。


 かなりの勾配であるが綺麗な空気と緑の中の走行はそれほど苦ではない。最も忌々しいのは排気ガスだ。雨、風は自然であり、致し方ないと諦める他はないが、人為的なことには腹も立つ。


 人は便利さと引き換えに、多くの大切なものを失っていくのであろう。


 正直辛かった峠越えが終わると一気に下るのだが、70km近いであろう速度は気を緩めることが出来ない。落車すれば命にも関わる。初めて走る道は路面の状況が把握できておらず、積載オーバーで走る大型車が作り上げた路面の凹凸があれば最悪だ。


 ジェット・コースターにも勝る恐怖から、麓に着くと一気に安堵する。コンビニを探してコーヒータイムと行きたいところであるが、求めているときに出くわさないのがコンビニで、マクドナルドがありコーヒーを頂き休憩だ。ついていないことに男性スタッフの対応であった。マックなんてもう行かない。


 マクドナルドを出て走行すると、すぐに海を見渡せるドライブインがある。とことんついてない私。


 先ほどの峠が県境であり、自転車での都市間移動を始めて3つ目の県に入った。どれぐらいの距離を走っているのだろうか。盗まれたサイクル・コンピューターが懐かしい。もしかしたら、今の下りで最高速度を更新していたかもしれないが、それもわかりはしないことだ。


 せめてマクドナルドで、素敵なお姉様の笑顔が見えたならなど、考えながら自転車を走らせると、君主の敵討ちをした家臣47名が英雄として奉り立てられる地に辿り着いた。


 テレビドラマなどでは英雄として映し出され、敵討ちされた側に非があるように認識しているが、果たしてどうなのであろうか。こんなことを深く掘り下げてみるのも歴史の面白いところである。


 どちら側から見るかで描写も変わり、一方だけから見ていては本当のところはわからない。どんなことに於いても両側から見て判断することが大切であり、その中で出した自分の認識が正しいのだと思う。


 この地を訪れ、帰ってからの楽しみがひとつ増えたのだ。


 宿を探し自転車で街を走ると、城を模した外観のホテルが目に飛び込み、予約以外は朝食も準備できないと言うが、値段も手ごろで、自転車もそのまま部屋に入れて良いと言われ宿を決めた。


 夕食にと個人店の居酒屋に入るも、あまり良い印象を受けることはなかった。長い旅の中ではこんなこともあるのだ。残念。


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