紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

Second piatto ご当地ラーメン


 楽しかった飲み会の翌朝は、なんだかぽっかりと穴が開いたような不思議な気分だ。女性たちは朝早くに出発の予定と話しており、すでに宿を後にしているであろう。


 電話を見るとメールの着信を示すランプが点灯し、確認すると、昨夜の女性からのメールであり、心温まるものを感じる。人の煩わしさと温かさが心の中で交差する。


 人は、人に頼り、頼られ生きていけるのかもしれない。


 身支度を整えホテルを出発して、昨日来た道をひたすらに戻るだけである。昨日同様にサンライズ糸山に立ち寄り、コーヒーを楽しんでいると、昨日声を掛けてくれた男性達と再会だ。お互いの健闘と無事にサイクリングを終えられることを願い、それぞれに帰路に着くことにした。


 寄り道はほとんどせず、所々に休憩を挟みブルーライン沿いに走り渡船場に着くも、昨日船を降りた場所とは違う。船を待つ方に尋ねると、公が2、民が1で3箇所の渡船場があると言う。渡った先は駅前の中心地から外れ、駅に向かうまでの間に新たな発見も多く出来たのだ。


 予想より早く駅前に辿り付き、整備された岸壁でのんびりと過ごし、このサイクリングを思い起こす。美しい景観を眺め物思いに耽ることも、私にはとても有意義な時間である。
 岸壁のフェンスに立て掛けた私の自転車の近くで、一人の女性が海を眺めている。この後ろ姿もまた美しい景観だ。


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 辺りを散策するも特に興味を引くものはなく、この地もご当地ラーメンで有名な場所であり、食べずにこの地を去ればきっと悔いが残ってしまう。駅の近くにあり寄ってみることにした。
 店内は15時をとっくに過ぎているが、かなりの客で賑わっている。カウンターに座りビールとラーメンを頼んだ。


 ラーメンはとても不思議な食べ物だと思う。地域はもちろん、お店ごとにそれぞれ特徴を持ち、スープの原料も、味付けの調味料も違えば、具も変わる。形があまりにもあいまいで楽しいのだ。


 ご当地ラーメンとして名前は聞くが、何の知識も持ち合わせておらずどんなラーメンなのか楽しみだ。
 ラーメンが出されるとぷにゅぷにゅしたものが多く浮かんでいる。背油を煮込んで味付けしてあるのだろう。大き目のチャーシューにメンマとねぎの具である。チャーシューは少し薄すぎな感もあるが、分厚いチャーシューよりは良い。
 スープは澄んだ醤油味であっさりして、どことなく魚介類の香りが漂ってくる。鶏がらか、豚骨を濁らせないように出汁を取り、魚介類のスープを合わせているのであろう。麺は中細のストレートだ。


 駅ビル内にあるラーメン店で、さほど期待はしていなかったが、とても満足できるものであった。これがこの地のラーメンだと言う確たる定義は、魚介のスープを併せることと、この背油なのだろう。数軒も食べれば答えは出るのだろうが、ラーメンばかりも食べていられない。


 二日間に渡っての長い自転車の走行は、飲みすぎもあり、早めの休息を身体が求め、この地から移動することなく宿を当たった。


 普段テレビを見ることはほとんどないのだが、何気なく付けて報道番組に合わて見ていると、元ウルグアイ大統領ムヒカ氏が慰霊碑前で黙祷する映像が映し出されている。画面を食い入るように見たものの、知的な女性を見つけることは出来なかった。
 
 氏とお会いできたことを願うばかりだ。


                          Second piatto(第二の皿)終り





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