紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

出来ることならば初話からお読み頂ければ幸いです。

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 連載中

Antipasto 癒しの寄り道

  初日 癒しの寄り道


 楽しみなことを前に、人は往々にして落ち着かない。昨夜も考えるべきことではなく、余計なことが頭をかすめなかなか眠ることが出来なかった。

 旅に対する不安はもちろんあり、宿の確保で予約が難しいのだ。宿の予約をするには確実にその場所に到着することが前提であり、今回の旅はより自由に行きたいので、行程を組むつもりはない。当日の空き部屋を当たるしか方法はないのだ。


 自転車旅は手軽がいい。大きな荷物をくくりつけたり背負ったりすることは避けたい。用意したのは自転車用、街中用の服と靴、輪行用品一式に水筒、小物入れだけだ。準備をすることで旅の楽しみが大きく、不安などはちっぽけなものに変わっていった。

 JR関西線南四日市駅を目指し旅をスタートさせる。約4km程の通いなれた道で、普段は公道のみ走るのだが、気分を変えて公園の中を走ってみた。排気ガスもなく緑の中を走り抜けることはとても快適だ。芝の上では、無邪気に走り回る子供にそれを見守る母親の姿があり、美しい母親の姿に自然と笑みがこぼれるのだ。残念ながら子供には興味がない。


 公園を抜け少し遠回りをすると一軒のコンビニエンス・ストアがある。遠回りせずとも他に店はあるのだが、私は毎朝必ずこの店に立ち寄り一杯のコーヒーを楽しんでいる。ある日この店に立ち寄り、レジでタバコや他の注文の最後に、

 「お姉さんのファンクラブの申込書ひとつ」 

と冗談がきっかけで、レジを担当してくれた女性と、少しだけ距離が縮まり仲良く話をするようになったのだ。ただ、これ以上距離を縮めるつもりはなく、朝の通勤時の小さな幸せなのである。
 今日も旅の前にと勇んでコンビニに走ったが、その美しい姿はすでになく午前中にしか来る価値のないことを学んだのだ。


 駅に到着してさっそく輪行の準備で、前輪を外して数箇所バンドで固定して、袋にいれて終わりだ。最初輪行したときは説明書を見ながらでかなりの時間を要してしまったが、今は10分もあれば完了だ。自転車を袋詰めすることは普段ほとんどなく、少しだけ非日常を感じさせてくれる。
 名古屋行き快速列車の到着で、再後尾車両に乗り込んで、後方に流れる景色をゆっくりと楽しむ。まだまだ見慣れた景色だが、いざ列車に乗り込むと旅が始まる気分にさせてくれる。


 南四日市駅は無人駅で、列車の中で乗車券を買ったのだが760円の支払いであった。四日市駅から名古屋は480円で差額は280円なのだが、南四日市から四日市までは一区間で190円なのである。とっても不思議な運賃計算で、90円余分に取られてる感じだ。
 90円はあと10円足すと100円で、毎朝私に小さな幸せを与えてくれる金額に等しいのである。同じ100円の使い方にこれほどの差が出てしまうとは驚きだ。



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