紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” 台湾ラーメン

 台湾とは国なのか?それとも中国の離島なのか?正直、私にはわからない。本人達がわかっていないのだから、私にわかるわけがない。この小さな島は過去にいくつもの国の支配を受けた歴史がある。アジア全土を支配下に置くことを目標にした日本も統治下に置いたことがある。台湾の中国支配が始まり日本との国交は途絶えたが、多くの台湾の方が日本で生活を営んでいた。


 名古屋には繁華街と呼ばれるところがいくつかあり、名古屋駅前、栄町、そして今池が主たるところ。私達世代の名古屋人にとってかつては、おじさんの街名古屋駅前、若者の街栄、そしてちょっと危ない街が今池だった。この今池には私も出演していたライブ・ハウスがあり、馴染み深い街。そして怪しげな街中に美味しい台湾料理のお店「味仙」(みせん)がある。


 BGMは大好きなCrusadersの前身、Jazz Crusaders時代のアルバムから。欲しいのは曲ではなく、アルバムタイトルのChile Con Soulとジャケット写真。私の引き出しもそろそろ限界か、、、やべっ。



 カラン、カランと呼び鈴が鳴り客の来店を知らせると彩香が顔をだし、ジンのロックを頼んだ。


「明日香が名古屋めし探検ツアーに一緒に行かないかだって。マスターの舌だけは信じれるから、教えてもらったあんスパのお店に行くんだって張り切ってますよ。で、夜も何かお店を探してるみたい」


「・・・・・」


「何か他にもお店教えてくださいよ」


「では、麺尽くしで台湾らーめんはいかがですか?」


「え?台湾らーめんなんてどこにでもあって、四日市だって食べれるじゃないですか。美味しいなんて思ったことありませんし」


「美味しい、不味いは好みですけど、本物を食べてから判断してもよろしいのではないでしょうかね」


「本物って言ったら台湾まで行かないとダメじゃないですか、も~う」


 台湾に行っても食べられない「台湾らーめん」が名古屋発祥のらーめん。今はこのらーめんは台湾にも上陸し、「名古屋拉麺」と呼ばれている不思議ならーめん。日本では名古屋を中心に東海3県(愛知、岐阜、三重)の多くのらーめん店のメニューに載り認知される。しかし、台湾らーめんをメニューに載せる店の多くは、独自性もなく、安易ならーめんを提供する店がほとんどだ。


 味仙の台湾らーめんはさすがだ。具に使われる肉味噌に於いても丁寧な味が施され、しびれるような辛さのなかにも奥行きがある。ただ、強烈な辛さは翌日に痛みを伴う。どこが痛いかは、ご想像にお任せ。


 ライブを終え、青菜炒めと手羽先の煮込みでビール、そして最後に台湾らーめんで〆るのが私の楽しみであった。翌朝の辛さがまた昨夜の美味を思い出させてくれ、二日間に亘り堪能できる。


   

(写真はすべて頂き物です。台湾らーめん、手羽先の煮込み、青菜炒め)


 他店が真似をすることにより名古屋めしとして認知もされるのであろうが、あまりにもお粗末な店が多いのも事実。食べることへの感謝も薄れ、安易に飲食店を志す者が多過ぎだ。


 名古屋めしと呼ばれる物の数の多さ、味、見た目のくどさもあって次第に嫌気がさしてきた。数が多ければ当てはまる数も増えるが、それは価値があることなのかと疑問に思う。物があふれる今の世の中も、同じ気がする。人は多くの大切な物を失い、多くの物を手に入れていくのだろう。まだまだ、名古屋めしと呼ばれるものがあるが、もう、限界。さらに新たな名古屋めしとして「カレー煮込みうどん」が登場していると言う。さすがに、もういいでしょ!となってしまう。名古屋めしを紹介しようと書き始めたが、名古屋が嫌いになりそうで、、、このシリーズはこれにて打ち切り。

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