紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” 味噌

 味噌は大豆の発酵食品であり、日本で独自の発展を遂げた調味料だ。使われるこうじにより、米味噌、麦、豆に分けられる。米味噌とは米を発酵させたものでは決してない。あくまでも大豆を発酵させたものが味噌で、酵母の種類によって分類される。味噌の約8割が米味噌だが、名古屋に多い赤味噌は豆味噌。熟成期間がながく色が付くようだ。


 若い方はあまり使うことがないかもしれないが、「手前味噌」と言う言葉がある。自分で自分を褒めたり、自慢するときに使う言葉で、「恐縮ですが」と同様に前置きし使われ、自家製味噌のこと。また、「重要」「ポイント」であることを伝えるのにも「味噌」を使う方が多いのではないかと思う。


 味噌が日本人に慣れ親しまれ、各家庭で造られていたことや、とても大切なものであることを表し、日本の食文化の素晴らしさでもある。アメリカ人は「そこがケチャップだよね~」とは決して言わない。食の欧米化が進み、味噌の消費も随分と減ってしまったのであろう。


 BGMはペダル・ポイントを使った曲。ペダル・ポイントとはコード進行に関係なく、ベース奏者などが同じ音を鳴らし続けるもの。音楽を聞くことに演奏上の理論はまったく意味がないが、味噌につながるものが思い当たらない、、、



Naima - John Coltrane


 カラン、カランと呼び鈴が鳴り客の来店を知らせると、彩香が顔を出した。ジンロックを頼み、何かつまみを考えているようだ。ジンロックを提供しスティックサラダをおすすめした。


「あ~、今日のディップお味噌なんだぁ~美味しい。お味噌って意外と何でも合うんですね。朝もトーストとハムエッグなんかでお味噌汁も飲まなくなっちゃったし、お味噌って身近なようでなかなか使わないな~」


「さようでしたか、日本人の味覚にはすごく合うんですけどね。私の子供の頃は何でも味噌。特に名古屋は味噌を使った料理が多いですからね」


 日本は若い人達だけではなく、高血圧を予防する意味でも塩分の多い味噌を控える方が多いと思う。私は高血圧と塩分摂取の因果関係など信じておらず、血圧が上がることも自然の摂理であって身体が必要として血圧を上げているものと認識している。過剰摂取はしないが、減塩など気にしたことがないし、減塩とうたわれる食品の方が身体には遥かに悪いとすら認識をしている。まぁ、これはまた別のお話。


 食材は菌による発酵がなされた場合、その素材が持つ栄養素だけではなく、多くの栄養が含まれ旨みも増す。菌の「生産物」により複雑な味が醸し出されるのだ。生産物とは、、、やめておこう、、、発酵食品を取れなくなる人がいるかもしれない。


 発酵食品は世界中に多くのものがあり、日本固有の文化ではないが、日本にも素晴らしい発酵食品が多くある(あった)。酒はもちろん、みりん、酢、醤油などの調味料から、挙げれば切がない。アメリカはその点で、食品の生産工程に発酵を要する物を嫌うようだ。アメリカはとても好きな国であるが、こと食に関しては見習いたくないことが多い。ある年齢に達したら太めの方が多いのもアメリカだ。食だけではなく、車社会に慣れ親しみ身体を動かすことが少ないことも要因だ。アメリカの悪い面をあえて取り入れる必要は何もないと思う。


「そうなんだ~、なんでも欧米に影響されて真似することが格好いいなんて思っちゃいけないですね。日本に古来からあるものは世界に誇れる物が多いんですね」


 名古屋めしと呼ばれるものは既存食のアレンジが多いが、古くから伝わる伝統ある味噌を大切にすることは、大いに自慢できることだと思う。


(写真はすべて頂き物です。味噌おでん、味噌カツ 味噌煮込みうどん)

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