紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” K祭 創造性


 クワンザ六日目を迎えた。日本は狭い国土にあっても南北に長く、気候の違いもあり違った趣があるはずだ。また、大陸、大洋、双方の気候の影響を大きく受け、夏には暖かい太平洋高気圧、冬には冷たい大陸からの高気圧が強まり、同じ緯度にある国と比べても四季の違いがはっきりと表れる。四季折々に素晴らしい景観を見せくれ、季節ごとの農作物が豊富に収穫できる希少な国であるはずだ。


  街に出ると横文字の看板がずらりと並び、全国チェーンの店が軒を連ねる。日本中、何処へ行っても街の景観は変わらない。


 BGMに“Marvin Gaye”と“Tammi Terrell”のデュエットを選びターンテーブルに乗せ針を落とした。




Marvin Gaye & Tammi Terrell ~ Ain't Nothing Like the Real Thing (1968)


 カラン、カランと呼び鈴が客の来店を知らせると、彩香が、以前ここで知り合い、連絡先を交換した女性を伴い来店をした。ジンのロックとモスコミュールを頼まれ提供し、再度の来店に礼を告げると、私が覚えていたことを嬉しがっている。何故だろうか、私は男の顔と名前がなかなか覚えられないが、女性客を忘れることはない。不思議だ。女性は名前を告げ自己紹介をして頭を下げた。


 私は六日目のロウソクに火を灯もし、お祝いのスタートを告げた。明日香はすでにクワンザについて彩香から話を聞いているようだ。私に今日のテーマを尋ね、答えた私を見て「難しいテーマだ」とこぼし、そして彩香が質問をした。


「ねえ、マスター、創造ってどう解釈したらいいんです?難し過ぎますね~今日のテーマ」


「そうですね、言葉の意味としては、新しいアイデアを創ったり、形あるものを造ることですね。新たな考え方や、発明品だったりするんじゃないでしょうか。その大切さを考えればよいと思いますよ」


「思いつきとかひらめきなんでしょうか?」


 創造性に於いて、明日香の質問したことは大きな進展であることには違いはないが、無知、無学から生まれるものでは決してない。基本的な知識の上に築かれ、しかも、先入観、固定概念が大きく創造性を妨げる。


「もうこれだけ便利なものが溢れていて、足りない物ってあるのかな~」


「そうですね、だた、何もここで新たな発明品を考えることではないですよね。便利なものが溢れ、私達はそれに振り回され、失ってきたものも多くあると思うんです。敢えて時代に逆行する行動力も必要なのではないでしょうか。創造とは形あるものを造り出すだけではないですから、過去にあったことを取り入れた生活スタイルを考えてみるのもいいかもしれませんね」


「時代に逆行して不便なものをですか?」


「不便と言うと少し意味合いが違いますけど、本来あるべきものに戻すことです。完全に戻せないまでも併用したりだとかね。例えば普段は時間に追われ調理に時間が割けない方でも、休日には昆布とかつお節から出汁を取ってお味噌汁作ってみたり、新鮮でもあるし、身体にだって優しいですし、美味しいわけですからね。それに、自転車は子供のおもちゃだなんて考えずに、乗ってみると楽しいものです。ストレスの発散も出来て、それで生活習慣病が改善されたら万々歳ですよ」


「インスタントの出汁でお味噌汁作る方すら少ないかもしれませんね。コンビニで食料を買って済ましたり、外食を利用される方も多いでしょうね。作る苦労を理解しないから、食べ物を粗末にしたりしてしまうんでしょうね。で、テレビ見たりゴロゴロしてるだけ」


「私、母親が作ってくれるお弁当が恥ずかしくて仕方なかったんです。いつも隠してお弁当食べてたなぁ~。同級生のお弁当は豪華なおかずがいっぱいで、色も綺麗でね。でも今思えば、母親が加工品とか買ってきてお弁当に詰めることはせず、きちんと調理したものをお弁当に入れてくれてたんだってわかったんです。自分で料理をするようになって初めて気付きました。恥かしいなんて思って罰当たりですよね、感謝しないといけないことなのに」


 母への思いをこう明日香は語った。そのとき理解できないことでも、自分が学び、習得することで理解できることも多くあるはずだ。人と同じであることに安心することは仕方のないことかもしれないが、そこから新たな創造が生まれることはないであろう。


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