紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” K祭 共同経済   


 クワンザ四日目を迎えた。街はクリスマスの終わりと共に年末商戦が繰り広げられ、ピークを迎えるのであろう。活気に満ちた街は気持ちのよいものだ。


 駅の裏手に回るとアーケード街があり多くの店舗が軒を連ねるが、活気はなくシャッターを閉ざしたままの店舗も多い。かつては多くの人で賑わったであろう跡が残るだけだ。買出しを済ませ、店に向かい営業だ。BGMは“Marvin Gaye”と“Diana Ross”のデュエットから選んだ。



My Mistake
 カラン、カランとドアベルが鳴り、客の来店を知らせると、サラリーマン風の男二人だ。迷うことなく店の奥まで進み、カウンターの隅に席を取った。飲み物を尋ねると横柄な口調でビールを頼み飲み始めた。客の立場に身を置くと、人が変わったように態度を変える者も多い。悲しき日本のサラリーマンの慣習は、いつまでも引き継がれていくのであろう。


 カラン、カランとドアベルが鳴り、“Joyous Kwanzaa”と女性二人の声がし、優子とジン好きの女性が一緒に姿を現した。私は伝えていなかったが、クワンザの祝いの言葉を学んだようだ。そしてジン好きの女性、彩香は、昨日、今日のテーマを確認し、いろいろ調べてきたと言う。私は、優子、彩香と呼び合う二人を見て、初めて彼女の名前を知った。そして、彩香は熱く語りだした。


「かつての日本は、国内で消費されるものの多くは、国内で生産さてきたはずです。今の時代と比べれば単価は高かったかもしれませんけど、多くの人が潤っていたと思うんです。季節ごとの美味しい農産物が家庭の食卓に並び、品質の良い工業製品が多くあったはずです」


「おっしゃる通りですね。食料需給率は下がり、工業製品にしても安い土地、労働力を海外求めコストを下げていますね」


「その結果、日本の雇用は崩れ格差が広がったんだと思うんです。物が安くなったと言え、雇用形態もあって低賃金で働かざるを得ない人達が大勢いるはずです。それに小売業が必要以上な大きな力を持ってしまい、プライベート・ブランドとしてどんどん安い製品を海外で作り、日本全国に展開し、中小のメーカーや商店は淘汰される一方ですよね」


 彩香がこう話すと二人組のサラリーマンが口を挟んできた。


「日本は自由社会ですよ。企業努力してるんですよ、我々はね」


 確かに日本は、彼らの言う通り自由社会であり弱肉強食であろう。しかし、日本全体のバランスを崩し、一極集中で利益を上げることが企業努力なのであろうか。


 今は中国企業の傘下であるが、安全性能で時代をリードした欧州の自動車メーカーは、自社開発の安全装置に特許を申請することはなかった。各メーカーが取り入れることにより、より安全な車社会を目指し、業界全体の底上げに貢献をした。世界のトヨタと言われるが、多くの下請け企業の犠牲の上に築き上げたものだ。見境なく責め込み、日本のバランスを崩すだけに留まらず、世界のバランスを崩す日本企業に正義があるとは思えない。


 物が安くなることは歓迎すべきことであるが、多くの問題も抱える。工業製品は利益を確保するためコストは下げられる。耐久性は低下し、使い捨てだ。欧米の家具は一生物であろう。量販店の家具など、数年でベニアが浮いてくる。欧米の家屋は手入れされていれば長年経過したものであっても価値が上がる。日本の家屋は年数が経過すればただのゴミだ。生産するだけでも廃棄物を伴うが、使い捨てにされる製品でまたゴミの山だ。


 中国から飛来するPM2.5が大きな問題として取り上げられるが、日本は文句など言えた筋合いではないであろう。日本からのオーダーで公害が広まっていることがあることも忘れてはいけない。


 農産物に至っては安全性の問題もあり、健康被害が懸念される。日本企業の要望に合わせ大量かつコストを下げ安定生産するには、基準値以上の「毒」の使用は仕方ないのかもしれない。工業製品同様に、日本側が求めてくることに合わせ生産をしているだけだ。生産者の非だけではなく、発注側にも当然非はある。スーパーの店頭には安全を謳った国産の青果が多くを占めている。仮に100%の産地偽証がないとし、日本の食糧需給率を考えれば、加工品、惣菜などに使われ避けることほぼ無理だ。


 大資本が物の値段の基準を作ってしまったことにも多くの問題があるであろう。安売りされる食品は、すべて添加物まみれの紛い物で、大切な日本の伝統も失われていく。消費者の味覚も狂わし、本物は益々店頭から消える運命だ。


 地方都市に次々と建設される大型小売店舗は、地元の雇用を活性化させる功績はあるにせよ、店舗建設に自然を破壊し、商店街、小売店を食いつぶし、郊外型店舗であるがゆえに車の利用で排気ガスを溢れさす。産地消費など今後の日本にはどこにもみられないであろう。


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