紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” 似て非なる国2


 自国の歴史に背を向けることなく教育を受けるドイツ人は、日本の教育に多くの疑問をもつであろう。歴史教科書の作成もかつて侵略をした隣国と協議し、ナチス時代に関する記述について双方が納得できる内容を確認し記述をしている。


「優子さんにお尋ねしたいんですけど、彼女が言われた第二次世界大戦、太平洋戦争で日本で思い当たる事をおっしゃって頂けませんか?」


「そうですね、なんと言っても原爆ですよね。原爆投下された国は世界中で日本だけだし、多くの民間人に被害が出て、決して許されることではないと思います。それに沖縄戦でしょうかね。アメリカ軍が上陸して沖縄戦でも多くの民間人が尊い命を亡くしています」


「そうですね、とても悲しい結果を招いてしまいました。クリスティーネ、今、優子さんがおっしゃられたことが大方の日本人の戦争に対する認識だと私も思います。しかし、これが日本の教育の現状なんですよね。被害を大きく被ったことは確かに印象に残るのでしょうけど、なぜ、この惨禍が起きてしまったのかを日本は教育してこなかったわけです」


「戦争でドイツの民間人も多くの方が亡くなっていますが、ドイツの教育はすべてドイツに非があることを学びます。そして政治家も国民もすべてそう認識し近隣諸国と接し、友好関係を築いています」


 ドイツは日本のように歴史問題を棚上げし関係国と接するのではなく、自国の非を認め今なお謝罪を続けている。連合国によって戦争犯罪が裁かれた後も、ナチスが犯した計画的で悪質な殺人については「時効を廃止」し、ドイツが自国の司法システムの下で戦後70年以上を経た今もナチスの戦争犯罪を訴追し続けている。過去に大きな過ちを犯したドイツはこうした努力を怠ることなく、真摯に過去と向き合うことをすべての政党と国民が共有しているのだ。


「言葉が悪いですけど、日本は自分達に非はなく、被害を被ったことだけ重要視していないですか?」


「はい、クリスティーネのおっしゃる通りだと思います。教育も含め、戦後処理でドイツと日本は大きな違いをみせました。残念なことですが、これが日本の現実なのです。どちらの政策が正しかったのかはもう結果が出てますね」


「と言うと?」


「ドイツは謙虚な姿勢で、歴史認識にぶれを見せず周辺諸国の信頼を回復して、今では欧州連合の事実上のリーダーです。一方の日本は、かつてのものづくり大国を支えた競争力は失せ、貿易赤字は拡大し、関係国との関係も悪化させています。日本は過去に侵略をした国と未だに小競り合いが続いていますよね」


「でも日本は何度詫びようが、相手は何代も恨み続けるのだから仕方のないことでは?」


「許してもらえない理由は相手にあるのではなく、自分達にあるのですよ。日本にはアジア蔑視の意識や在日の方への根強い差別が残っています。そのどこに謙虚さがあるのでしょうか。許してもらえない理由は日本にあるんです。差別意識はすべて後天性です。これは日本の政治、教育を映し出したものです」


「確かにありますね。馬鹿にして差別しておいて、いくら詫びたところで伝わらないですよね」


「それはおかしいです。誤っておいて、後ろ向いて舌を出してるようなものですね。謙虚さのかけらもありません。それでは伝わらないと言うか、日本人の本心を見抜いているんじゃないですか?被害者意識が強くて、傲慢。自分達のことしか考えてませんね、日本。残念です」


 日本には未だに多くの差別が残り、新たな差別も生み出そうとしている。国民の意識はもちろん、政治、教育に問題がある気がしてならない。謙虚な姿勢から差別が生まれることはない。


 ドイツのヴィリー・ブラント元首相はこう言葉を残した。


「戦後に生まれた若い人たちに昔のドイツ人が行なった罪を背負わせるのは反対だ。ただし、今の若者もドイツの歴史から逃れることはできない以上、ナチスが犯した過去の罪について正しく知る必要がある。そうして自分の国の歴史と批判的に向き合うほど、かつて自分の国が被害を与えた国々や民族との関係を改善できるのだ」


 ドイツ人は真面目だ。日本人の表面だけの真面目さとは大きく違うのであろう。ドイツの鉄道に改札口はなく、しようと思えばいつでもキセルが出来る。なぜないのか、それはドイツで切符を買うことが常識だから改札など必要のないものなのだ。


「マスターBGM忘れてますよ!」


「あ、本当ですね。申し訳ありません」


「マスター私、アイヌ民族の話、聞きたいです。教えてください」


「私もまだ多くを理解していませんので、少しだけ」
                                      続く


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