紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” 甘い罠2


 男達は砂糖の毒性を説き、ゼロカロリー商品を称え店を後にした。物が氾濫する中で何を選ぶかは本人次第だ。選べることも豊かさの象徴である。ただ、ベルトに乗っかったお腹は、残念ながら引っ込むことはないであろう。


「何か、嫌な感じだったわね。でもお砂糖の毒性を煽って利益が出る会社って?」


「新たに認可されてきた合成甘味料の会社ですよ。BGM替えますね」


「わ~面白いジャケット写真ですね。表と裏のアンバランスさ」


 表面にイケ面の二人が大型のオートバイに跨ったカラー、裏面は濃いキャラの二人が自転車に跨ったモノクロの写真を使ったレコードを棚から出してターンテーブルに乗せた。



 軽快なロックンロールが持ち味であるが、ライブではファッツ・ドミノの曲を演奏したりと、アフリカ系アメリカ人の音楽の影響を多く受けたようだ。実はこのバンドとは同席して酒を飲んだことがあり、またの機会に話してみたいと思う。みな心底音楽を愛するナイスな男達だ。もちろん偉そうな態度をとることもまったくなかった。


「“I want you to want me”の邦題が『甘い罠』って、誰が考えるんでしょうね」


「やりたい放題ですね、邦題も添加物も。ただ、この邦題はぴったりですね、お話の」


「罠かぁ~、合成甘味料ってゼロカロリーとかに入ってるやつですか?」


「そうですね、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKなどですね」


「よく見ますね、原材料名の欄で」


「素晴らしいですね、原材料名見ないで買う人がほとんどですけど。合成甘味料はカロリーゼロとかの表示されたジュースやお菓子などによく使われているんですけど、いかにも身体にに優しいような表現がされていますよね、でも、とんでもなく危険な食品添加物ですよ」


 人がどう感じるかは自由で、ゼロカロリー、カロリーオフの言葉に身体に優しい、良いと感じることも勝手なことで、売る側からすればそう感じ買ってくれれば良いだけだ。減量、疾病に苦しむ人のことなど企業は関係ない。


 砂糖や炭水化物などの糖質の高い食べ物を摂取すると、30分ほどで血糖値が急上昇し、それを下げるためにすい臓からインスリンが分泌される。通常食事をした時、消化吸収され血中に栄養が流れるまで10時間ほどかかるのだが、あらかじめ肝臓に蓄えられていた糖分を放出することにより血糖値は食後すぐに上昇をする。


 体内で消化吸収されない合成甘味料を摂取した場合、放出のみされ蓄える糖分が不足をすることとなり、体内のタンパク質を使い糖に変えて貯蔵をする。この糖新生には様々な障害を伴ってしまう。


 ダイエットどころの騒ぎではなく、確実に身体を蝕んでいくものだ。カロリーオフで健康に、、、なるわけがない。カロリーハーフも100gで100カロリーある食物を50gにして「ゴミ」を50g加えただけの話だ。加えられる物質が無害な「ゴミ」であることを望むが、そうはいかないであろう。


「怖い世の中ですね、いかにも身体によさそうな表示をして買わせるなんて」


「人は金が絡めば何でもしますから、新たに作り出されるものより、昔からあるものを信じることが一番だと思いますよ。それにダイエットしたいなら運動しかありません。楽することを覚えたらとことん楽を考えるのが人です。能力は退化する一方で、身体も心も壊れてしまいます」

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