紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” 価値2


 「残念ですが、仕方ないですよ。人により求めるものが違いますから、すべての方に受け入れられる店はあり得ないです」


「チキン焼き上がったら、私、頂きます。伝票きちんと付けてくださいよ」


「お気遣いなさらないで下さいよ」


「いえ、そんなんではないんです。匂いを嗅がされたら我慢できませんよ。私も出来上がったら同じもの頼もうと思ってましたから」


「ありがとうございます。先ほどのお客様は、チキンを好ましく思ってらっしゃらなかったから、美味しく焼き上げて驚かせようと思ったんですけど、私の失敗ですね」


「チキン美味しいのにね~」


「値段の高い、安いで価値が決まるとは思わないんですけどね。値段はあくまでも市場の原理であって味には関係ないですし、牛肉が高いのは飼育期間が長く、掛かる経費の問題ですからね。価格が安い豚肉、鶏肉が劣ることでは決してありませんよ」


 付け合わせにポテト、ニンジンのガロニを添え、チキンを切り分け盛り付けた上にクレソンを飾った。


「おいしいっ!なんでフライパンで焼いてこんなに皮がパリパリなんですか?それにお肉がジューシー。ちょっとびっくりですよ」


「コツはとっても簡単で、火力は弱火、後、蓋はしないことですね。蒸し焼きにしてしまうと早いですけど、皮はパリパリに焼けませんので。オーブンがなくても調理法をきっちりと守れば、ご家庭でも簡単に作れますよ」


「この焼き方だと、ぐんと価値があがりますね。頂いた命を美味しく頂くことは大切ですよね」



Joe Sample & Randy Crawford - Almaz


 「BGMを替えますね。この曲は昔テレビドラマの挿入歌として使われたのでご存知じゃないでしょうか?再放送かな?年齢的に」


 「はい、聞いたことありますよ」


 この世の中に存在するもので、価値がないものなど何一つないのであろう。人も同じだ。しかし、評価される、されないは、世代も違えば育った環境も違い、評価する個人の価値観によって大きく変わってしまう。大切なのは自己評価ではなく第三者からされる評価に変わりはないが、手を抜くことなく精一杯やり得た結果であれば、評価されずとも恥じることではないと思う。


 豊かに成り過ぎた結果、考え方も行動も多様化されてしまった。向かう方向が異なれば価値観を共にすることなど出来ない。しかし、差別や争い、多くの人を不幸にする行為は、是正され同じ方向を向かなければないらない。価値ある人生とは、己の欲に走り贅沢な暮らしをすることではなく、豊かで平和な世の中を後世に残すことではないだろうか。


「謙虚さ、思いやりを持たないとですね。私も気をつけないと」


「そうですよね、大切なことです。同僚の方をやりこめた課長も、部下が仕事で成果をあげられなかったのは自分の指導、教育に問題があったと悟るべきですよね。己の憂さを晴らすような怒りかたをしても、そこから良い結果は生まれません。私も今日怒らせてしまったお客様に、最善を尽くしたのか、他に手立てがなかったのか、もう一度考えなければいけませんね」


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