紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

Primo piatto 偉大な英雄

 

 宿に戻り今日見て感じたことを、飲食コーナーのカウンター越しに目に入ってしまう、決して綺麗とは言えないお姉さまを見ないように、ビールを煽り物心にふけっていた。


 この地には至る所に坂本竜馬がいて、多くの銅像が建ち、街の象徴となっている。象徴ならまだしも依存している感さえあるのだ。人気があり目当てに観光客が増えることは望ましいのだが、私にはこの英雄がよくわからないのだ。なぜここまでもてはやされるのか理解出来ない。


 坂本竜馬が志士として活動した最初の組織は土佐勤王党で、絶対的な指導力を持った武市半平太にはその存在は遠く及ばない。薩長同盟を締結させたとされる件は、確かに仲介をしており、長州藩桂小五郎の覚書に証人として裏書もしているが、中岡慎太郎の功績が絶大だ。大政奉還を成し遂げたのは、後藤象二郎、高岡考弟の功績で献上したのは土佐藩主山内容堂であり、後押ししたのは小松帯刃だ。


 坂本竜馬の主だった活動は、薩摩藩から手の離れた社中が、土佐商会と合体し土佐藩管轄の元、海援隊として活動した組織の隊長を務めたに過ぎない。


 過去には江戸期に活躍した人物が、テレビドラマの中で英雄となったことがある。水戸光圀、大岡忠相、遠山左衛門尉景元などすべて実在の人物であるが、ドラマの中で描かれた人物像とは大きくかけ離れている。


 明治時代には当然テレビなどはなく小説の中で人物が描かれていったのだ。竜馬は柴崎紫欄が書き上げた幕末の英雄なのかもしれない。また、全国にファンの組織を持つなどの持てはやされ方は、歴史人としての扱いではなく、虚像崇拝に近いものがあると感じる。私は例えウルトラの星に行ける時代が来たとしても、決して行くことはないであろう。


 大きな期待をして訪れた社中も、歴史的価値のある展示は少なく、ただ竜馬グッズを並べただけに過ぎないものであった。幕末期に多くのことに関与した社中も偉大な英雄の前に影を潜めてしまったようだ。


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