紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

Primo piatto 平和な世の中

 
 翌日目が覚めると、酒の飲みすぎであろう体が重く、すっきりとしない。雨も激しく降っており憂鬱だ。このまま滞在し雨の上がるのを待つか、JRで移動するかであるが、とりあえずチェックアウトを済ませ駅に向かうことにした。


 駅のコンビニで軽い食料を調達して、雨が上がったら自転車に切り替えようとJRに乗り込んだが、どうも身体が列車の移動を望んでいたようだ。途中の乗換駅で石碑があり、旅情と記されている。旅で感じる気持ちなのか、旅人の気持ちなのであろうこの旅情を求めて、旅をしているのかもしれない。


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 途中雨も上がり天候の回復をみせたが、体調がやはり思わしくなく列車を乗り継ぎ目的地の駅に着いてしまった。
 どこまでJRを利用するかも決めておらず、改札で清算をしようと切符を差し出し財布を用意していると、女性駅員がもう切符はいただきましたよと声をかけてきた。後から考えれば、そのまま改札を抜けられるのだが人はいざとなったとき正直なものである。途中までしか買っていないと説明し清算を済ませたが、知らぬ顔をして通り抜ければこれも立派な犯罪で、これで良いのだ。


 駅前の広場に出ると何かのイベントであろう、多くの若い女性がステージ前に陣取り、階上のフェンスにも人が集まっている。ざっと見た感じ200名はいる。厳重に警戒をされている中、仕切られた通路で私は自転車を組み立てようとしていると、私の横を数名の男性が駆け抜け、大きな歓声とともにステージに上がったが、彼らを私は知らない。警備員に何も言われることのなかった私は、石ころのような存在であったのであろう。
 歌っているのか、しゃべっているのかわからない彼らを尻目に自転車を組み立て出発だ。


 駅より南に進路を取り、適当なところで左折すると多くの中華料理店が軒を連ねている。横浜、神戸と並ぶ中華街だが、あいにく時間帯もあり多くの客で溢れかえっている様子はない。
 道に迷い派出所に現在地の確認をと飛び込んだのだが、どこに行きたいと聞かれ、思わず社中と答えていて、この地の滞在中に訪れたいと思っていた場所でもあり、道順も明確であり向かうことにした。


 通りから数百もの石段を登り建っていた社中は、想像していたものよりかなり小さな屋敷だ。


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 見学後、やはり歴史的価値の高い出島を目指したが見つけることが出来なかった。


 幕末期の外国人居留地に向かうと、多くの観光施設が人々を魅了している。時間も押し詰まり見学は明日にしようと自転車を走らせようとすると、こじんまりとしたコーヒー屋を見つけ、60前後とおもわれる細身でとても綺麗な女性が出迎えてくれた。自身を美しく見せることを怠らない女性は、いくつになっても素敵だ。


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 この店で宿の情報などを入れ、再び港周辺を自転車で走っているとカプセルホテルが目に飛び込んで来たのだ。しばらくビジネスホテルでの狭い風呂が続き、部屋でくつろぐよりも大きな風呂とサウナを楽しみたいと気持ちが勝り、チェックインをした。
 サウナと風呂を楽しみ、ちゃんぽんと看板の出た中華料理店に入った。ビールと餃子がお腹に収まり、お目当てのちゃんぽんを頼むと、白濁したスープに魚介類と野菜の具が盛りだくさんで麺が隠れてしまうほどだ。紅白のかまぼこは絶対的な存在なのであろう。


 さきほどのコーヒー店の客が、もう美味しいちゃんぽんを食べさせる店はないと言っていたが、本当においしいちゃんぽんを知らないのが救いかも知れない。ただ、感じたのは多くの中華料理店にあるように、化学調味料の使いすぎで舌がしびれる感じだ。コーヒー店の客がもらした言葉は、ここにあるのかもしれない。



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