紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” 雑菌天国3

 人は生物としてのあるべき寿命を全うすることなく、ほとんどの人が人生を終える。身体がその年齢まで耐えられないには、様々な要因が絡み合い簡単な理由ではないだろうが、自然の摂理に反した多くの行いがそうさせているのだと思う。何も120まで生きたいとは思わないが、何か大切なことを人は見失っているのではないだろうか。


 BGMはこの曲、この古い世界は私には格好いいんだ、なんて意味なのかな、、、

Joe Cocker & The Crusaders - This Old World's Too Funky For Me (1981)
「そもそも除菌や殺菌の類ってさ、人にとって悪い菌だけ退治できるの?違うでしょ、有益な菌までも殺してしまうのよ。あなた今お口にヘルペス出来てるわよね、何が原因なのかはわからないけど、ヘルペスの症状で収まってるものは大して有害な菌じゃないはずよ。それぐらいの菌が取り付いても普通なら皮膚にいる常在菌が退治してくれるものよ」



「だから除菌や殺菌が必要なの」



「だから~、殺菌して必要な常在菌まで殺しちゃってるから退治出来ないんだと思うよ。あなたが自分自身で抵抗力の弱い身体を作ってるの。あなた風邪もひきやすいでしょ」



「まぁ、年に数回は」



「それも有益菌とのバランスが崩れてるからだと思うけどな、私。人間の身体は菌で覆われていて、外部の有害な菌が付かないようにもしてくれてるのよ。除菌や殺菌してスペース空けて有害な菌に『はい、どうぞ~』って言ってるのと同じよ。まぁ、あなたの人生は私に関係ないけど、明日香は大切な友達だから変な洗脳させないで欲しいわ」



「・・・・・」



「明日香は私の言うことにも流されないで、自分で勉強して、必要だと思えば除菌グッズを買い揃えればいいんじゃない。大切なのは人が言うことや宣伝に振り回されないで、自分自身で知り、それで選ぶことよ」



 私は自然の摂理から大きく外れた行為を好ましいとは思わない。人が自然を制覇できるなど決してなく、ただ、自然のなかで生かされているだけだ。自然界は絶妙なバランスを保ち、多くの生命体が生存できている。除菌、殺菌と過剰に躍起になることは、このバランスを大きく崩すことではないだろうか。すべてが循環し環境を整えている。食物連鎖(食物網)も含み、このバランスを崩せば生命の維持などできるわけがない。



 過去には見聞きもしなかった新たな疾患が増えていることも、このバランスが大きく崩れているからではないのだろうか。このバランスを崩すものは、地球上に人間しかいない。人はどんな英知を得ようが自然の中で生かされているだけのこと。食中毒を起こすような菌の浄化も、水があれば事足りてしまうものだ。お風呂で身体をボディシャンプーでゴシゴシと洗うことも好ましい行為ではない。この地球上に必要のないものは何もない。あるとすれば、人間が考えた愚かな物や、人間の存在だけかも知れない。

“Soul bar-IORI” 雑菌天国2

 動物は呼吸することで酸素を取り入れ二酸化炭素を排出し、植物は逆でこれは共生していること。海、山の水が蒸発し雨を降らせ、微生物が動物の排泄物などを栄養に換え、それを含んだ水がまた海に流れる。素晴らしいバランスが保たれ循環し、多くの生物が地球上で共存できている。


 人と菌は古来から深い結びつきがある。菌の存在などわからない時代から多くの発酵食品があり、人にとって有益な菌も多い。体内にも多くの菌を宿し、人は生きていける。特に消化管の大腸に多く、その種は500とも言われ、100兆もの菌が存在しているらしい。病原菌ともされる大腸菌が仲良く?暮らしているには不思議な気もするが、何かしらの必要があり人の体内にいるのかもしれない。この辺りは私もまだまだ追いついていないが、バランスを保ち生存している。


 体内に宿る菌は別として、ウィルスや病原菌と呼ばれ人に取り有害な微生物や菌も存在はしている。毎年のように猛威を振るうインフルエンザ、食中毒を引き起こすものなどなど、虫歯も菌の仕業だ。ウィルスとは他の生物の細胞に入り込み自己を複製する微生物でウィルス自体は細胞がない。BGM換えますね。


 BGMはこの曲で。オリジナルのニール・セダカを探していたら、こんなん出てきました。「優しい悪魔」は知ってたけど、この曲カバーしてたなんて、、、それもメインは一番大好きな「ミッキちゃ~ん!」そりゃ、ピンク・レディもいいけどさ、やっぱキャンディーズもいいよね~。でも、「南海キャンディーズ」は、、、ちょっと嫌。♪へ~い、りろっ でぶ♪



キャンディーズ 小さな悪魔


「もう、マスターの人格疑うわ~」


「ちゃんと聞いて!ねえ、人にとって害のあるウィルスや菌はものすごく多いんですよ。だから自己防衛のためにも除菌や殺菌はとっても大切なのよ」


「感染しないように努めることは大切って思うけど、その為に人には免疫があるんじゃないの?」


「免疫があってもそれは完璧ではないから病気になったりするのよ。免疫があるから大丈夫なんて言ってたら、感染症にかかって亡くなる人なんていないわよ」


 疾患にかかると言うことは、そもそも身体の防御反応で現れる症状を示すことで、ウィルスや菌が引き起こすものではない。これらが体内に入ったことにより身体が起こしている症状である。免疫が勝り、細菌を退治することができれば症状は改善され治癒されるが、免疫が劣った場合、ウィルス、菌に侵された細胞が増殖し本来のものと姿を変え機能も失う。免疫が勝っている状態が相応しいのだが、様々な要因で免疫が劣ることもある。生物学的には人の寿命は120歳と言われるが、この年齢を迎えられる人は稀であろう。


                                  続く

“Soul bar-IORI” 雑菌天国1

 原始地球から今もなお生き続ける微生物。環境の劇的な変化で絶滅した生物がいる中、これ、凄いこと。とかく人からは嫌われ、除菌グッズが多くの店頭に並んでいる。見えてもいないものに、これほどの存在感があることも、これまた凄いこと。生物学などまったく理解せず、多くの認識違いもあるかもしれないが、嫌われ者の菌を考えてみた。


 BGMはこの曲で。「ダンス天国」菌達も踊っちゃうかな

Wilson Pickett - Land of a Thousand Dances (HQ)
 カラン、カランと呼び鈴が鳴り客の来店を知らせると、新規の女性客が現れた。


「いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ」


「ごめんなさいね、嫌味じゃないんですけど、こうしないと」


 女性はバックから除菌シートを取り出し、椅子を拭き上げてから腰を降ろした。あまり気分はよくないが、止めるわけにはいかないであろう。そしてビールを頼み、注いだグラスの泡を確認し口を付けた。確かに汚れたグラスにビールを注げばグラス内面に気泡が付き、ビールの味も落としてしまう。私も油を多用する中華店などでビールグラスにぞっとすることもある。飲食を営むのであれば、最低限守るべきことはあるはずだ。味を落としてしまう要因などあってはならない。


 女性との会話はさほど弾むことはなく時間が過ぎ、彩香と明日香が顔をだした。明日の日曜に電車で名古屋に出かけ、あんスパと台湾らーめんを堪能する予定だと話す。そしてカウンター上に置いてある除菌シートから、菌の話に移ったようで、女性3人の会話が始まった。


「いつでも使ってくださいね」


「大丈夫ですよ、私、菌なんて気にしたことないですから」


 彩香が声を上げ高らかに笑うと、女性は菌の有害性について語り、除菌、殺菌の必要性を説きだした。明日香は除菌関連の製品を買った経験がなく、女性の強い勧めで、購入を検討しだしすと、彩香が話し始めた。


「除菌、除菌って馬鹿じゃないの。菌は危険だって煽られて商品買わされてるだけでしょ、そんなの。あんた達の顔の1cm四方にどんだけ菌がいると思ってんのよ。億よ、億。そんなに菌が嫌なら、顔面に除菌スプレーしなさいよ」


 人の数だけ考え方もあり押し付けたり改めさせることは至難の事で、そこから多くの問題も発生する。ただ、私は除菌関連の商品は過剰な宣伝に煽られている気がする。除菌とは必要なものなのか、必要ではないのか、はたまた、してはいけないものなのか、、、


                                      続く