紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

「家族」 新たな生活 2

 
 営業が始まるとすぐに客が集まり出し、コーヒーと軽いサンドウィッチを楽しむ。決して安い価格ではないが、調度品は見合ったものを設え、コーヒーも自家焙煎された豆を注文を受けてからミル挽きし、一杯一杯丁寧にドリップされ、コーヒーフレッシュは使わず、生クリームが提供される。


 言うまでもなくコーヒーフレッシュはミルクの代用品で、広く一般化したフェイク食品である。水と油を様々な添加物を加えミルク風に仕立て上げたもので、このカフェで使われることはない。アイス用のガムシロップもキビトウを煮詰めた自家製で、ブドウ糖加糖液等で作られる一般的なガムシロではない。


 遺伝子組み換え食品は口にしないつもりであっても、清涼飲料水を飲んだり、カフェやコンビニ、家庭でガムシロを使ううこともあるのではないだろうか。しっかりと遺伝子組み換え食品から出来上がった製品を、口に入れさせれられてしまう。


 また、「遺伝子組み換えではない」と原材料名にうたわれる商品も、10%未満であれば遺伝子を組み換えた作物の混入は認められ、このような表示が可能である。


 物理的に誤って混入することなどは考えにくく、人為的に混ぜ合わせるのであろう。


 食することは、人が命をつなぐ上で最も重要であり、必要不可欠なことだ。体内に取り入れられた栄養素により新たな細胞が作られ、人体を作り上げる。質の悪い材料、もしくは不純物の混ざった材料で作られる細胞は、いかなるものなのであろう。多くの疑問を払拭することは出来ない。


 また問題なのは、知らず知らずのうちに体内に取り入れられてしまうことだ。この時代、本来人間が食するべきものだけを求めれば、自給自足する以外に方法はなくほぼ不可能である。ただ、守る術として大切なことはバランスで、適さない食事が続いた場合、少しの期間避けるなどの調整が大切であるが、この自己管理すらも出来ない「しくみ」を日本は創り上げてしまった。日本人として生まれたことを、こと食品については諦めるしかないであろう。


 コーヒータイムのピークが終わると、スタッフの休憩だ。交代で個別にとるのではなく一斉に休憩に入り、常連客も混じりおしゃべりの時間となる。常連客の中にはスタッフとの懇談を楽しみに、時間を合わせてやってくる客もいるほどで、綾香も常連客に紹介されすっかり溶け込んでいる。この時間にはランチタイムの従業員も揃い、仕事前のコーヒーを楽しんでいる。
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