紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

Caffe 後世に残すべきもの


 旅を終え自宅に戻りテレビを点けると、熊本の地震がニュースで流れている。ほんのつい先日に滞在したばかりで、見学した城などに大きな被害が出て驚くばかりだ。真っ先にホテルのフロント女性(Primo piatto 嫌な予感)の安否が気にかかる。発生が勤務中であれば、客の避難誘導など多くの苦労があるであろう。怪我もなく無事であることを願うだけだ。また、自身の脱出願望がここに理由があったとは信じがたいが、今まで感じたことのない不思議な感覚であった。


 人は自然の中に生かされているだけで、自然の猛威に勝る術は残念ながら持ち合わせていない。知恵を授かったばかりに、自然の摂理から大きく外れた行いを続ければ、破滅が待ち受けるだけであろう。今更、原始的な生活など出来るはずもなく、授かった知恵は、自然とのバランスを取り、活かしていかなければならない。


 人には多くの欲がある。三大欲求の食欲、睡眠欲、性欲は、生きて子孫を残すための原始的で必要不可欠な欲なのだが、常に現状に満足することなく新しいものを求めている。それ故、新たな発見、発明もあるが、過ちも犯してしまう。


 欲が絡めば必ず争いが起きる。個人単位であっても国家単位であってもだ。国内統治に飽き足らず、支配を他国にまで求めた結果、今回の旅で訪れた広島、長崎の惨禍を招いてしまった。独立国家に攻め入り勝利できた軍事力を、なぜ防衛だけの為に留めなかったのであろうか。すべては欲であると思う。


 2011年3月11日、宮城県沖で発生した地震により、東北、関東地方が膨大な被害を受けた。まだまだ多くの方がこの被害に苦しめられている。地震発生は天災であり致し方ないと諦めることが出来るであろうか。特に原発被害を受けた福島の方は、つよく感じるであろう。


 欲から、より便利な物、より快適な物を求める。その欲を賄うためには大量の電力も必要であり、原発がなければ補うことは出来ないであろう。原発が必要となるまで欲を出した、人がもたらした人災だ。私たち日本国民すべての責任なのではないだろうか。放射能の恐ろしさは、私たちが世界中のどこの国の人よりも理解しているはずでもある。


 同じ言葉を繰り返してしまうが、今更原始には戻れない。ただ、ほんの少しだけ巻き戻すことは出来るのではないだろうか。


 ヨーロッパは緯度的なこともあり、森林が弱く一度破壊されれば元に戻ることはないと言われる。その分環境問題に敏感であり、多くの取り組みを行っている。日本は温暖であり幸いに森林は強く、国土の多くを占めている。ただ地球温暖化が進み、いまだかつてなかった異常気象がこのまま増え続ければ、この先どうなってしまうのであろう。


 木々に包まれた緑の中に、安らぎを感じる人は多いであろう。公園を整備し植林をしたり、街路樹も至るところに植えられている。家庭でもガーデニングをし、緑を楽しむ人も多いのではないかと思う。


 人はなぜ緑を求めるのであろう。


 あくまでも私の解釈である。人は猿から進化している。猿は生活の場を肉食獣からの攻撃を受ける地上から、より安全な木の上に求めた。森の中、緑の中が一番心安らぐ場所であり、その遺伝子が未だに人の中に居続けているのではないかと思う。


 きらびやかなネオン街のお姉様に安らぎを感じるのは、また、別の話である。


 自然との調和、バランスを取ることは、野生動物の遺伝子が残っていれば、それほど難しいことではないのだと思う。人が授かった知恵は、破壊に繋がることではなく、自然の中で生かされていることを踏まえ、活かさなければならないのだ。


 旅で、美しい山々をたくさん見た。そして美しい海も見ることが出来た。ただ、海は綺麗な場所も、そうではない場所もあるが、世界にたったひとつしかない。すべて人の手により姿を変えてしまったのだ。


 高度経済成長の中で生きてきた私たち世代は、多くのことを見失っていると思う。このまま次世代に残していいのであろうか。本当の意味での豊かさを後世に残していきたいと思う。
                         自転車と列車の旅 追憶記  完

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