紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

Second piatto 目的を達成するには


 コーヒーを終えて出発すると、ブルーラインは島の中心地に入り、多くの観光客が集まっている。箱物の観光施設には、さほど興味もなく全てをスルーし通り抜けた。


 中心地を外れ、視界に海が現れ綺麗な景観が広がる。すると何かあったのであろうか、魅惑のおしりが歩道上で立ち尽くしているのだ。きっと、私を待っていたのであろう。ほんと馬鹿。


 何かトラブルであろうか。近づき声をかけると、パンクである。
 困っている相手が女性であれば手を貸し、男性の健常者であれば、自分の力でなんとかしなさいと、放置することが男の優しさだと思う。この場合、手を差し伸べる場面である。


 彼女は20代前半と思われ、駅前から船で渡った島の在住で、三つ先の島までの往復サイクリングを貸し自転車で挑戦し、今回が二回目の挑戦で、先回はこの次の島で、時間的な理由で折り返し、時間を早め出発をしたと話す。


 私は自転車を始めてからパンクの経験がなく、修理セットは不要と判断し持ち合わせておらず、どう手助けをしてよいものなのか模索していたが見つからない。
 彼女は何度も貸し自転車屋に連絡を入れているが、先方が電話に出ないとこぼしている。なんとか連絡をし、最悪は、家族に迎えに来てもらい帰ると言う。


 私も手助けの方法がなく、勇気付けだけでこの場を離れたのだが、しばらく走りふと小物入れが気になり、自転車を停め確認をすると、予備のチューブがやはり入っている。慌てて彼女の元に戻ったのだ。


 彼女はその後も出ない相手にコールを繰り返すのみで、他に手立てがない様子だ。
 先ず、自転車を走れる状態に戻し目的地到達を目指すのか、諦めて家族に迎えに来てもらうか確認を取ると、


「今度こそ行きたいって思ったんですけどね、、、」


なら目的達成の為の思索を考えましょうと伝え、パンクは乗り手の責任であり、貸し自転車店に連絡を入れたところで目的は達成できない。修理後返却してくださいと言われるか、そのままの返却でも良いが修理代金を請求されるだけであろう。修理の出来る場所に自転車を持ち込むか、空気を入れることが出来る場所に行き予備のチューブと交換するしか、目的を達成するには方法がないことを諭した。


 先ず自転車修理をあたり、その場合の支払いも彼女に用意があることを確認し、もし修理が出来る場所が見つからない場合、予備のチューブを無償提供するのでコンビニまで戻り交換し空気を入れましょうと行動に移した。このとき彼女の顔から初めて笑顔が見られた。出ない相手に何度も電話をしイライラを募らせるより、前を向き行動することが心を落ち着かせるのだ。


 二人で自転車を押し、歩きながらスマホで自転車店を探すと、ここから1km程戻った商店街に自転車店があり光が見えた。
 修理を完了させ別れることにし、貴重な時間を取らせてしまったと何度も詫びるが、実際には私は何もしていないのだ。困ったときはお互い様で、困った人を見かけたら、自分の出来る範囲で助けてあげればそれでよいことだと伝えた。
 私にとっても旅の良い思い出である。


 この海道は多くのサイクリストが訪れる。豊富な知識と技術を持ち合わせたスペシャリストも、貸し自転車でサイクリングを楽しむ初心者もいる。
 貸し自転車を利用する方には、ある程度のパンクの回避の方法や、仮に起きてしまったときの対処の方法を伝え貸すべきではないだろうか。
 そして彼女が借り受けた自転車はクロスバイクであるり、それなりにスピードも出せるスポーツ車だ。的確なポジションの設定をすることも大切で、彼女の場合、明らかにサドルのポジションが合わず、おしりがこっけいな動きを見せていた。
 本来自転車が持つ力を発揮できないし、身体に痛みが出る恐れもある。快適なサイクリングを無事に終えてもらうためにも注意するべき点をしっかりと伝え、適切なポジションに合わせて貸し出しをして欲しいと思う。
 自転車を楽しいと思ってもらうことが最優先で、トラブルが起きれば嫌になってしまうものだ。


×

非ログインユーザーとして返信する