紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” Kwanzaa 結束


 私はバー・カウンターの隅に黒、赤、緑の麦わらで織られたマットを敷き、黒のロウソクを中央に配し、向かって右側に緑を3本、左に3本を立て、果物、とうもろこしの供え物をセットし、BGMには“Marvin Gaye”を選んだ。



Marvin Gaye - Mercy, Mercy Me


 当時、シングル盤でのヒット狙いが中心であったアフリカ系アメリカ人の音楽、特に所属した“Motown”はアーチストの自由表現を避け、社会情勢を盛り込んだ内容に消極的である。自身で感じたことを干渉されずに作品にまとめ上げる為、セルフ・プロデュースで望み発表されたアルバム“What's going on”はアフリカ系アメリカ人の音楽に留まらず、アメリカ、いや、世界の音楽史に燦然と輝くアルバムであろう。


 カラン、カランとドアベルが鳴り、ジン好きの彼女が来店をし、カウンターに置かれた祝い祭壇を見て驚いている。


「びっくり、何、これ。何かの宗教ですか?」


「驚いてしまいますね。宗教には全く関係ないアフリカ系アメリカ人のお祝い行事で、“Kwanzaa”クワンザを一緒に祝おうと思いまして」


「へぇ~、どんなお祝いなんですか?」


 クワンザは1966年、まだ比較的新しく提唱され始まった行事で、毎年12月26日から始まり1月1日まで続く。スワヒリ語で「初めての果物」という意味であり、アフリカ系アメリカ人が祖国アフリカの文化や伝統を祝うと共に、自らの誇り、アメリカでの未来を切り拓くための礎を確認するためのものだ。


 また7つの原理、結束、自己決定、共同事業と責任、共同経済、目的、創造性、信頼から成り立ち、家族で集まり毎日一つずつ学びそして感謝する事に重点が置かれる。


「そして最終日には本などのギフト交換が行われますね」


「日本だと装飾品だったり、子供にはゲームだったりしちゃうんでしょうけど、やはり違いますね。私も一週間続けて通って一つずつ考えて行きます。そしたら何か本を贈ってくださいね。日本人が最も考えないといけないこともあるでしょうから、勝手な解釈されずに浸透すればいいですね」


「何か素敵な本を探しておきますね。多くの日本人が本当に考えないといけないことだと思うんですけど、必要ないこととして欠けてしまったのか、見失ってしまったのでしょうね。高度経済を目指すばかりで、多くの大切なものを日本は失ったんだと思います」


「豊かさはあっても、まだ心まで豊かに成れていないと言うか、逆に荒んでしまったんですね」


「お金があるから強いだけで、本当の強さではないですよね。本当の強さは優しさだったり思いやりに表れると思うんです」


「私利私欲に走り、自己の満足が満たされれば、他人のことなんてどうでもいいのが日本ですもんね」


「多くの人が結束して、本当に豊かな国を後世に残したいものですね。そのためにはもっと、もっと心が強くならなければいけませんね」

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