紀行、小説のノベログです 日々感じていることを盛り込み綴っています

「自転車と列車の旅の追憶」 紀行 完
「大海原」 紀行 完
「家族」 小説 完
“Soul bar-IORI” 短編小説 完

“Soul bar-IORI” 甘い罠1

 
 BGMに大好きな“The Crusaders”の“Sweet'n Sour”を選んだ。



The Crusaders - Sweet 'n Sour


 カラン、カランと呼び鈴が鳴り、客の来店を知らせた。新規の男性二名である。


「いらっしゃいませ。お二人様ですね、お好きなお席にどうぞ」


 カウンター中央に座った男達に飲み物を尋ねると、カロリーオフのビールが欲しいと頼まれたが、あいにく用意をしていない。仕方ない様子で普通のビールを頼んでいた。お腹はしっかりとベルトに乗っかっている。 


 二人の会話はカロリーオフの食事や飲料の情報交換のよう、ゼロカロリーやカロリーハーフなどの商品を選んで購入しているらしい。スーパーに行けばこの手の類の商品が多く並べられ、健康ブームを後押ししているようだ。興味ある内容ではあるが、話しかけられるまで放っておこう。おっさん二人に興味はない。


 カラン、カランと呼び鈴がなり、ジン好きな女性が現れた。


「いらっしゃいませ。お飲み物はいかがいたしますか?」


「ジンでなにかカクテル作ってくださいよ」


 生ライムを絞り、氷を落としたシェーカーに15mℓ入れ、ビーフィータージンを45mℓ加えシェークし、カクテルグラスの淵をライムで湿らせ砂糖でスノースタイルに仕上げ注いだ。


「お待たせ致しました。ギムレットの変化形です」


「いっただっきま~す。う~ん、生のライムとお砂糖がいい感じですね。最初甘さがきて、後からライムのすっぱさがなんとも絶妙」


「ありがとうございます」


 いきなり男性の一人が口を挟んだ。


「今のは砂糖なのか?砂糖みたいなものは毒だろ。わざわざ毒を盛って出すなんてさ、お姉さん、そんなの飲んだらダメだよ」


「・・・・・」「・・・・・」


 砂糖の毒性について男が語り、合い方も相槌を打っている。


 確かに砂糖は中毒性があり肥満等の原因と言われ、特に白砂糖はメーカーにより差もあるのであろうが、精製過程で化学薬品が使われるものもある。毒と言われれば否定はしない。過剰摂取は多くの疾患の原因にもなるであろう。


 三大栄養素は人により、酒、タバコ、お姉ちゃんだったりもするが、一般的にはタンパク質、脂質、糖質(炭水化物)である。砂糖は大切なブドウ糖の供給源であり、でんぷん質で補う場合に比べ圧倒的に早くブドウ糖に変化してくれる優れものでもある。ブドウ糖が不足すれば、骨格筋からタンパク質を取り出し肝臓でブドウ糖が作られる。この際に膨大なエネルギーが使われ、活性酸素も多く発生してしまう。過剰摂取は問題だが、それほど敵視するものではないと私は思う。


 問題なのは砂糖の毒性、健康被害を浸透させ、膨大な利益を生む企業がある。新たな食品添加物が認可されるには多くの利権も絡み、恩恵を受けるのは企業だけでは決してないであろう。より安全なものが開発され、人を健康に導くものであれば良いのだがそうではないようだ。
                                      続く

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