“Soul bar-IORI” ブーム
“boom”ブームとは英語で表される擬音語で、「ドーン」とか「バーン」の意味である。日本で使われる「流行」とかの意味合いとは異なり、外国の方に“It's my boom”とか言ったところで、何を言ってるんだろうこの変な人と思われることは間違いない。
「流行」を表す英語は“popular”(人気)であったり“fashion”“trend”(傾向)などを使うことが多いみたいだ。また、あっと言う間に過ぎ去ってしまう流行などは“fad”「気まぐれ」と“latest”「最新の」を組み合わせ“This is latest fad”と表現をする。ブームとは経済効果を狙った創作かもしれない。嫌な思いを残すこともあるようだ。
ポピュラーなジャズ・ヴォーカルをBGMに選んだ。
ルイ・アームストロング~What a Wonderful World.
ルイ・アームストロングは文筆家としても知られ、多くの名言を世の残した音楽家である。
「もしもイエス・キリストが黒い肌で行進をなされば、やはり彼らは殴打するのだろうな」
「途中であきらめちゃいけない。途中であきらめてしまったら、得るものより失うもののほうがずっと多くなってしまうから」
「自分の演奏について説明が要るようなら、演奏などするべきではない」
「僕たちの演奏しているものは人生だ」
カラン、カランとドアベルが鳴り客の来店を知らせると、新規の40代と思われる女性が一人で入ってきた。
「いらっしゃいませ。お好きなお席にどうぞ」
女性は隅を選ばずカウンターの中央を選んだ。頑張れ!私。
「お飲み物はいかがなさいますか?」
「何かカクテルが飲みたいな、甘くてしかもお酒がきつくてロングタイプで」
「かしこまりました」
氷を落としたタンブラーにウォッカを45mℓ入れ、オレンジ・ジュースで満たし軽くステアーし、グラスの淵にオレンジカットを添えた。
「スクリュー・ドライバーでございます」
「ありがとう。なにかいい感じね、流行に流されない音楽もお酒も素敵。私は流行なんて大嫌いっ!」
「さようでございましたか。価値観は人それぞれですけど、振り回されないことは素晴らしいことだと思いますよ」
「私は一度もブームに乗れなかったわ」
「・・・・乗れなかった・・・・ですか?」
「そうよ、私が女子高生の頃、女子大生ブームが真っ盛り。女子高生なんて子供扱いされて見向きもされなかったわ。私も早く女子大生に成りたいってあこがれたわ。受験勉強し、やっとの思いで大学に入って、ブームの中心になれる~って思ったら、もうその時は女子大生なんておばさん扱いで、時代は女子高生よ。頭きちゃったわよ」
「・・・・・」
「ブームなんて馬鹿みたいよね、振り回されてさ」
「・・・・・」
「あ~あ」
「・・・今、熟女ブームですからよろしいじゃありませんか」
「失礼ね、あなた。熟女だなんて、もう帰るわこんな店」
「・・・・・」